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夕食にて

コウスケがエドに水着を届けた夜。


約束通り集まった四人は、宿屋に併設された食堂でテーブルを囲んでいた。


「たった一週間だったけど、ロイドとは久しぶりな気がするね?一人で寂しかったんじゃない?」


エルネが対面に座るロイドへと声をかける。


「それ程でも無いさ。エルネ君はどうだい?変わりは無かったかい?」


そう返すロイド。


「全っ然問題無し!あっそうだ!新しい弓が出来たんだ!見る?」


そう言って、魔法鞄を漁り出すエルネ。


しかし


「コラ!こんなトコでそんな物出すなよ!メシ食うトコだぞ!後にしろ、後に!」


そう言って、割って入るコウスケ。


コウスケの言葉に、軽く舌を出しておどけたエルネは


「後で見せるね」


そう、ロイドに言った。


ロイドは、少し笑顔を見せると頷く。


そんなロイドを確認したエルネは、今度は隣に座るミランダへと顔を向けた。


ミランダは、温かいお茶の様な物を目を伏せて味わっていた。


言っておくが食後では無い。


今は注文した料理を待っている状況だ。


しかし、ミランダはいつもこの時間に温かい飲み物を飲みながら待つのである。


顔を向けても気づかないのを良い事に、エルネはそんなミランダをニヤニヤとしながら眺める。


ミランダの向かいに座っているコウスケは、そんなエルネを「今度は何だ?」と言わんばかりに監視していた。


そんなコウスケの監視の元、ミランダを眺めていたエルネは、ミランダがコクリと飲み物を飲み下したのを見計らう様に声をかけた。


「それで?ミラちゃんの方はどうだったの?」


突然話し掛けられたミランダだったが、スッと目を上げるとエルネに向け


「どう、とは?エルネとは依頼で一緒だっただろう?」


そう言って、首を傾げる。


しかし、エルネはニヤけを深めると


「一緒じゃ無かった時の事を聞いてるのよ?何度かコウスケに頼んで、こっちに来てたでしょ?その時の事よ?」


そう言って、目を光らせる。


エルネにそう尋ねられたミランダは、分かりやすく目を泳がせた。


そこへ、エルネの意図を理解したコウスケが


「シャズとのデートだったんだろ?仲人の俺としては、上手くいってんのか気になるのは普通だよな?」


そう言って、参戦する。


ニヤニヤとミランダに迫る二人の間を、顔を引き吊らせながら目を往復させるミランダ。


二人が全く同じ顔をしている様にミランダからは見えたとか。


二人の圧に負けたミランダは、シャズとの進捗状況を洗いざらい吐いた。


ミランダの話を聞いている間、エルネは終始「ハァ~」や「フゥ~」等とため息をついていた。


コウスケはというと、自分で聞いておきながら終始表情を歪ませ、普段は砂糖を入れて飲んでいる苦い飲み物を面白くなさそうに口に運びながら話を聞いていた。


ミランダの話が終わると、エルネは頬に手を当てため息、ミランダは赤面してうつ向く、コウスケは苦い飲み物を音を立てて啜っていた。


皆、理由は違えど心ここに在らずといった様子だ。


ロイドだけが、本を開いていつも通りの様子だった。


そこへ、注文していた料理が運ばれてきた。


並べられた料理を前に、ポンっとロイドが音を立てて本を閉じる。


その音で戻ってくる三人。


「さっ!頂こうか」


そう言って、取り皿を手にするロイド。


その言葉に、三人も気を取り直して夕食を摂り始めた。


そこからは、ここまで大人しくしていたピィちゃんと、まともな食事に瞳孔を細める小次郎も参加して、賑やかな夕食となった。



食後。


お腹を満たした一同は、ゆったりとした気分で食後のお茶を飲んでいる。


いや、ある人物の杯からは湯気が立っていないのを見ると、おそらくは酒だろうが。


ピィちゃんと小次郎は、其々の飼い主の膝の上で満足気にひっくり返っている。


そんな中


「そう言えばコウスケは何をしてたの?何だか飛び回ってたみたいだけど」


と、思い出した様にエルネが声を上げた。


頬杖を付きながら、同時にテーブルの下で小次郎の腹を撫で和んでいたコウスケは


「え?だから、エドんトコ行ったり、モン爺んトコ顔出したり、ミランダの送り迎えしたりだよ」


そう言って、エルネに目を向ける。


「アレ?でも、怪しい人の所にも行くって言ってなかった?」


そう言って、首を傾げるエルネ。


しかし、首を傾げたのはエルネだけでは無かった。


話を聞いていたミランダとロイドも同じ様にしていた。


そんな二人の様子を見たコウスケは、おそらくエルネが言った‘怪しい人’と言う言葉に対してだと当たりをつける。


そして、商業都市・ビーサスで出会った怪しい案内人の事を二人に説明した。


コウスケが話始めた頃は懐かしそうに聞いていたエルネだったが、話が終わる頃になるとピィちゃんをモフる事に集中しているエルネ。


「まさかエルネの借金の理由がそんな事だったとは・・・」


コウスケの説明を聞き終えたミランダは、そう溢す。


案内人の説明をするにあたって、コウスケはエルネをオークションで競り落とし助けた事も話していた。


これまで、何度もコウスケに「借金を返せ」とエルネが言われている現場を目撃していた二人だったが、その借金の理由までは知らなかった。


その理由が、人拐いに捕まり売られたエルネを、コウスケが大金を用意して助けたと初めて知った二人。


しかも、狙われている事を知っていて捕まったと聞き、何とも言えない顔でエルネを見る。


ミランダに至っては、少し怒っている様にも見える。


エルネもそれを感じたのか


「こうなると思ってたから黙ってたのに!コウスケッ!何で言っちゃうのよッ!!」


と、コウスケに情けない顔を向ける。


しかしコウスケは


「‘怪しい人’なんて二人が分からん言葉を出したのはエルネだろ?そうなったら二人に説明しない訳にはいかねぇだろうが?」


そう、エルネに言い返す。


コウスケの言葉に、頬を膨らませ睨むエルネだったが


「エルネ。流石にもう少し確りした方が良い。これまでも何度かそう思う事はあったが・・・」


と、ミランダの説教が始まり、エルネは肩を落とした。


コウスケはエルネに向け手を合わせていた。


そんなコウスケに、「助けて」と言わんばかりの表情を向けるエルネ。


眉を困らせ、涙目になったエルネに


「・・・まぁ、きっちり鍛えてもらえ。内面を」


そう言って、再び手を合わせるコウスケ。


顔を上げたコウスケは、膝の上でひっくり返っている小次郎の腹を撫でながら


「俺がビーサスに行ってた理由は・・・今度でいっか」


そう呟くのだった。




ミランダの長い説教が終わった頃。


エルネは瞳を濁らせ、そのエルネに撫でられているピィちゃんは、悪夢でも見ているのか魘されていた。


そんなタイミングを見計らって


「みんな、明日の予定はどんな感じ?」


そうコウスケが口を開く。


その質問に最初に答えたのは、意気消沈した様子のエルネだった。


「これからは一層依頼に励みたいと思います・・・」


コウスケの質問の答えとしては、ややズレていたが。


それを、依頼を受ける、と取ったコウスケは


「そ、そうか。じゃあ特に大事な用事は無いって事だな?ロイドはどうだ?」


と、ロイドにも尋ねた。


「私は本を読むつもりだが?」


そう返すロイド。


「そうか。じゃあ大丈夫だな?本は何処でも読めるしな!ミランダは?」


コウスケの言葉に「まぁ」と返したロイド。


それに頷いたコウスケは、ミランダにも尋ねる。


皆、予定は無いとコウスケは思っていた様だが、コウスケの質問にミランダが答えを言い淀む。


そんな様子のミランダに


「もしかして、何か予定あった?」


と、問い直すコウスケ。


その言葉に、何度か目を泳がせたミランダは


「その・・・シャ、シャズと・・・その・・・」


と、歯切れ悪く答えた。


朗々とエルネに説教をしていたのが、同一人物とは思えない程だった。


しかし、それを聞いたコウスケは


「シャズとデートか?・・・いや、逆にアリだな?」


そう呟くと、ニヤリと笑う。


そして


「よしっ!じゃあ明日はみんな、俺に付き合ってくれ」


そう言って力強く頷くコウスケ。


その言葉に、盛大に顔を困らせたミランダは


「いや、だから明日は・・・シャズと・・・」


徐々に声を小さくしながら、そう言った。


しかしコウスケは


「心配すんなって!シャズも呼ぶから!俺から連絡しとくよ!」


そう言って、良い笑顔をミランダへと向ける。


「でも・・・二人きりが・・・」


そんなミランダの呟きは、コウスケ気合いの声にかき消されるのだった。


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