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案件3

翌日。


コウスケはエルネとミランダを連れプレーヌスへと戻っていた。


一週間ぶりに揃った四人だったが、揃ったところでこの四人が一緒に何かをするという事は無い。


精々が食事を揃って摂るくらいだ。


短い会話の結果、やはりそういう事に落ち着いたのか、夕食の約束をした四人はそれぞれ思い思いに散って行った。


エルネとミランダは飽きもせずギルドへと向かった。


この日、シャズは不在だった様だ。


ロイドは読書をする、と宿の部屋へと向かった。


そして、そんな三人を見送ったコウスケは


「ウチの奴等は我が道を行き過ぎなんだよなぁ・・・まぁいっか!いいですよ?独りでエドんトコ行きますよ」


そう、拗ねた様に呟く。


しかし


「ワシを忘れるな!」


そんな言葉がコウスケの足元から聞こえた。


声の主を見下ろしたコウスケは


「小次郎、付いてくんのか?散歩に行っても良いんだぞ?」


そう、足元の小次郎に声をかけた。


しかし、小次郎は身軽な動きでコウスケの体を登ると、定位置である肩に腰をおろす。


そして


「この街にはワシに敵う様な猫は居りそうも無いからな。見回る必要は無いのじゃ!」


そう、コウスケの顔の横で言った。


猫の顔の割りにはキリッとした表情を作りそう言う小次郎。


しかし、コウスケはそんな小次郎の顔を冷めた目で見詰める。


(あれは只の散歩じゃなくて、縄張りを見回ってたのか?いや、もしかすると広げようとでもしてたのかもな?)


小次郎の顔を見ながらそんな事を考えるコウスケ。


そう考えたコウスケは


「ならこの街のボスでもぶっ飛ばして、一気に街全体を縄張りにしちまえば良いじゃねぇか?」


そう、提案する。


しかし、コウスケのその提案を聞いた小次郎はススッと顔を背けると


「・・・そ、そんな事はいつでも出来るからな。今日は貴様に付き合ってやると言っているんだ」


そう答えた。


そんな小次郎に疑いの目を向けたコウスケは


「・・・小次郎。ガラルクラフトでの勝率は?」


そう、顔を背ける小次郎に尋ねた。


すると小次郎は、コウスケの肩についた前足を目一杯伸ばす様に胸を張ると


「一度たりとも負けてはおらんッ!」


そう、言い放った。


「勝ち数を聞いてんだよッ!」


透かさず、そうツッコむコウスケ。


しかし小次郎は


「・・・」


凛々しく胸を張ったまま、口を噤んだ。


「一度も勝て無かったのか?それで一度も負けてねぇって事は・・・お前、逃げたな?」


そう言って、小次郎に横目を向けるコウスケ。


「・・・」


しかし、小次郎は又も答えない。


「成る程・・・現実を受け入れて、大人しく飼い猫として生きていく覚悟を決めた訳だ?」


そう、おちょくる様に言うコウスケ。


すると、流石に黙っていられなくなったのか


「フンッ・・・弱い者イジメを止めるだけじゃ!」


そう言って、強がって見せる小次郎。


しかし


「・・・イジメられない様に逃げる。の間違いだろ?」


そう言って、鼻で笑うコウスケ。


コウスケの言葉に、悔しそうな表情を作る小次郎だったが、流石に分が悪いと悟ったのか


「煩いわッ!!・・・貴様には用事があるのだろう?さっさと歩くのじゃ!」


と、無理矢理話題を切り替える様に叫んだ。


小次郎のそんな言葉に、呆れた顔を見せるコウスケ。


仕方なく小次郎を肩に乗せたまま、エドの屋敷へと向かうのだった。





「よっ!エド!今良いか?」


エドの屋敷へとついたコウスケは、慣れた様子で上がり込むと何時もの部屋の扉を開け、軽い挨拶の言葉と共に顔を覗かせた。


「あぁ、コウスケか?大丈夫だよ?また、この間の話かい?」


そう返すエド。


エドも、コウスケが突然訪ねて来る事に慣れてきている様だ。


許可を得たコウスケはいつものソファーに腰をおろし


「いや。今日はソレじゃない。コレだ」


そう言って、ソファーの前のローテーブルに木箱を出した。


それを見たエドは、仕事机からコウスケの向かいのソファーに移動する。


エドが向かいに腰をおろすのを確認したコウスケは


「水着が出来上がったから持って来た」


そう言って、木箱を見やる。


「意外と早かったね?でも、これで準備完了だね?ようやくって感じがするなぁ」


染々といった様子で、目を閉じながらそう言うエド。


それを聞いたコウスケは


「へぇ、コレで最後か?じゃあ後は、お偉いさんを待つだけか?」


そう尋ねる。


コウスケの言葉に頷くだけで答えるエド。


「そっか。んで?そのお偉いさんはどんな感じなんだ?」


再び尋ねるコウスケ。


しかし其ほど興味は無さそうな態度だ。


そんなコウスケに表情を引き吊らせながら


「コウスケがガラルクラフトへ行った頃に、首都を出発したって連絡が来てたよ」


そう答えるエド。


「俺があっちに行った頃って事は一週間くらい前か?・・・本当に来るんだな?」


思い出す様にそう言ったコウスケは、最後に呆れる様な表情を作った。


コウスケの言動に、更に顔を引き吊らせるエドだったが


「コウスケ!いつも注意してるだろ?・・・まぁ、今回だけは僕もそう思ってしまったけどね」


そう言って、疲れた表情へと変えるエド。


そんなエドをからかう様に笑ったコウスケは


「まぁ、来るって言ってんなら仕方ねぇけどな?・・・でも、一国の王がそんな簡単に首都を離れて良いのか?今俺が向こうに行って一暴れしたら、クーデターとか成功すんじゃね?そういう事考えたら怖くなんねぇのかな?」


そう言って更に笑う。


「その辺りは流石に確りと準備しての事だと思うよ?それよりも、そんな事を笑いながら言えるコウスケの方が僕は怖いよ?頼むからそんな事、間違っても外では言わないでよ?国家転覆を図った罪で捕まっても知らないよ?」


真剣にコウスケを心配する様なエド。


「俺だって流石にそこまでバカじゃねぇよ?まぁ絶対にやらないとは言い切れねぇけど?」


真剣なエドに、おどける様に返すコウスケ。


そんなコウスケの言葉に、呆れる様にひとつため息をついたエドは、背もたれに体を預け


「全く、僕は真面目に言ってるのに・・・それで捕まっても僕は助けてあげないからね!」


そう言って横を向くエド。


「良いよ?逃げるから」


コウスケがそう言って笑っていると


「飲み物で御座います」


そう言って、エドの執事がコウスケとエドの前に温かい飲み物が注がれたカップを置いた。


「ありがとう」


そう返すエド。


「どもども」


コウスケはそんな風に返す。


二人の言葉を受けると下がって行く執事。


すると、そこでローテーブルを叩く音が聞こえた。


その音は、コウスケの隣から聞こえていた。


コウスケは隣にいる音の発生源を見下ろす。


「何してんだ、小次郎?机叩くなよ」


ローテーブルをペチペチと叩いていたのは、コウスケの肩から降りて隣に座っていた小次郎だった。


そんな小次郎をコウスケ同様に見下ろしたエドは


「どうしたんだい?小次郎君?」


小次郎が話せる事を知っているため、そう丁寧に尋ねる。


コウスケの言葉は無視した小次郎だったが、エドの丁寧な言葉に目を向けると


「小僧!飲み物が二つとはどういう事だッ!ワシの分も出さぬかッ!」


そう、腹立たしげにローテーブルをペチペチと叩き続けながら言った。


そんな小次郎の言葉に、どうしたモノか?と苦笑いを浮かべるエド。


小次郎の態度は実に横柄な物だった。


しかしエドはそんな小次郎に腹を立てる事はせず、それどころか逆に、実にコウスケの飼い猫らしい、と妙に納得していた。


何か用意してあげよう。


エドがそんな事を考えていると


「小次郎!エドに言ってもダメだぞ!」


そう、叱る様に小次郎に言うコウスケ。


それを聞いたエドは驚きに目を見開く。


コウスケがまともな事を言っている。と。


そして先程、横柄な態度の小次郎をコウスケの飼い猫らしいなどと思った自分を恥ずかしくも思っていた。


感動する様に深く頷くエド。


しかし、そんなエドの耳に


「エドに言っても出てこねぇぞ?そっちの爺さんに言わねぇと」


そんなコウスケの言葉が。


思わず


「え?」


そんな声を漏らすエド。


しかし、そんなエドを気にする事なく


「なんじゃ?そうだったのか?ならばそこの年寄りよ、ワシにも飲み物を出すのじゃ!ついでに何か食う物も持って来い!」


そう、エドの執事に言い放つ小次郎。


そんな小次郎の言葉に、どういうつもりなのか?そんな疑念を込めコウスケに目を向けるエド。


エドがコウスケを見ると、そのコウスケは、さぁどうする?と、ワクワクした様な目を執事に向けていた。


コウスケが何を企んでいるのかに思い至ったエドは呆れる。


コウスケは小次郎を使って、執事を困らせようと思っているらしかった。


そして、それを眺めて楽しもうというのだろう。


エドは申し訳無さそうに執事を見る。


執事は、冷めた目でコウスケと小次郎をしばらく見ていたが


「・・・かしこまりました。少々お待ち下さい」


そう言って一礼すると、部屋を出ていった。


それを、満足げに頷きながら見送る小次郎と、ニヤニヤとしながら見送るコウスケ。


「コウスケ。あんまり爺で遊ぶなよ?」


そう、少し咎める様に言うエド。


その言葉を聞いたコウスケは、執事を見送るために背を向けていた体を戻し


「エドは気にならねぇのか?あの爺さんがどうするのか」


そう言って、ニヤついたままの顔をエドに向けた。


コウスケのそんな言葉に


「それは・・・」


そう言って考えるエド。


「・・・確かに気になるけど・・・少しだよ?少し」


考えてそんな答えを出すエド。


「そうだろ?真面目に対応するのか、それとも何か仕掛けて来るのか。楽しみだなぁ」


そう言って、ニヤニヤとするコウスケ。


「コウスケが相手の爺の事だから、真面目に対応する事は無いと思うよ?」


少し困った様に言うエド。


付き合いの長いエドがそう言うのだから、とコウスケは期待を膨らませる様に目を輝かせる。


「貴様等は何を訳の分からん事を・・・飲み物と食う物を持って来いと言っただけじゃろ?使用人ならばそれに従うのが当然じゃ。真面目にもクソもあるか」


これまでの、コウスケと執事のやり取りを知らない小次郎はそう言って眉を寄せる。


そんな小次郎を、コウスケはニヤリと、エドは苦笑いで見る。


数分後。


小次郎の前には、皿に入ったミルクと生魚が置かれていた。


その執事の対応にコウスケ、エド、小次郎は其々に何かを堪える様にプルプルと震えていた。


執事は満足気に控えているのだった。


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