第0章 また、なろう系か
最近、アニメの新番組一覧を眺めていると、毎クールのように思う。
「また、なろう系か」
異世界転生。
異世界転移。
追放。
悪役令嬢。
チート能力。
最強主人公。
もちろん、そのすべてが「小説家になろう」発の作品というわけではない。
カクヨムだったり、アルファポリスだったり、別の投稿サイトだったり。
そもそもWeb小説ですらない作品まで、なんとなくまとめて、
「なろう系」
と呼ばれている。
考えてみれば、ずいぶん不思議な話である。
私が「小説家になろう」を読み始めた頃。
そこで読んでいた作品が、後にここまで漫画やアニメの世界を席巻するなんて、まったく想像していなかった。
面白そうなタイトルを見つけてクリックする。
読む。
続きが気になればお気に入りに入れる。
更新されたらまた読む。
ランキングを眺めて、次の作品を探す。
基本的には、それだけの場所だった。
ところが、いつの間にか作品ページに、
「書籍化決定!」
という文字を見ることが増えていった。
最初の頃は、
「おお、この作品、本になるのか!」
と普通に驚いた。
それが増えてくると、今度は、
「コミカライズ決定!」
を見るようになる。
そしてさらに、
「TVアニメ化決定!」
まで出てくる。
今では珍しくもない。
むしろ人気作品を読んでいると、
「これはそのうち書籍化するだろうな」
「漫画には向いてそうだな」
「ここまで売れたらアニメもあるかな」
なんて、こちらまで勝手に考えるようになった。
慣れとは恐ろしい。
そして今では、入口そのものまで逆転している。
アニメを見て、
「これ面白いな」
と思って調べたら、
「原作、なろうだったの?」
となる。
漫画アプリでたまたま読んだ作品が面白くて検索したら、
何年も前からWeb小説として連載されていた。
そんなことも珍しくなくなった。
昔の私なら、
なろうで原作を読む
↓
書籍化を知る
↓
漫画版を読む
↓
アニメを見る
という順番だった。
ところが今は、
アニメ
↓
漫画
↓
原作小説
という逆方向から入ることまである。
いつの間にか、「なろう」は、なろうの中だけで完結する文化ではなくなっていた。
第一部では、
「なろうでは、どんな物語が流行ってきたのか」
を、私自身の読書歴を思い出しながら勝手に振り返ってみた。
異世界転移。
異世界転生。
ゲーム世界。
チート。
内政。
追放。
ざまぁ。
悪役令嬢。
現代ダンジョン。
配信。
一つの型が流行れば、それを土台にまた別の型が生まれる。
そうやって「なろう系」の物語そのものが変わっていった。
では第二部では、少し視点を変えてみたい。
今度見るのは、
その作品たちが「なろうの外へ出ていった歴史」である。
Web上にしか存在しなかった文字だけの作品が、本になる。
本になった作品が、漫画になる。
漫画になった作品が、アニメになる。
こう書くと、
人気作品が順番に出世していっただけのようにも見える。
最初は実際、そうだったのだと思う。
人気が出たから書籍化される。
さらに売れたから、
コミカライズされる。
もっと大きくなれば、
アニメ化される。
ところが、この流れが当たり前になってくると、少し話が変わってくる。
作品が漫画になる。
アニメになる。
そして、それが売れる。
そんな成功例が何本も出てくる。
すると当然、
「漫画にしやすい作品」
「アニメにしやすい作品」
というものも意識されるようになる。
主人公の能力が分かりやすい。
一話目から事件が起きる。
キャラクターが立っている。
絵にした時に映える場面がある。
タイトルを見れば、大体どんな話なのか分かる。
こうした要素が強い作品は、漫画にもアニメにも持っていきやすい。
そして、ここで一つ面白いことが起きる。
本来は、
Web小説が売れた結果として起きていたはずのメディアミックスが、逆にWeb小説の作られ方へ影響し始める。
のではないか。
最初は、
Web小説
↓
商業出版
という一方通行だった。
ところが市場が大きくなると、
商業側で求められるもの
↓
Web小説
という逆方向の力まで働き始める。
もしそうだとすれば、
「なろう系」が今の形になった理由は、
なろうの中で流行したテンプレートだけでは説明できない。
書籍。
漫画。
アニメ。
そうした外側のメディアもまた、
「なろう系」というものを作ってきたことになる。
第一部では、
なろうの中で物語がどう変わったのか。
第二部では、
なろうの外へ出ていった作品が、逆になろうへ何を返してきたのか。
そこを考えてみたい。
もちろん今回も、何かの研究論文を書くわけではない。
出版業界の内部事情を知っているわけでもない。
十数年なろうを読んできた一人の読者が、
「あの頃、こんな感じだったよな」
「そういえば、いつから当たり前になったんだ?」
と、記憶をたどりながら勝手に考えているだけである。
なので、
「いや、その時期は違う」
「その作品より先にこれがある」
「出版事情はそんな単純じゃない」
というところも当然あると思う。
そこは第一部と同じく、
「こういうふうに見えていた読者もいた」
くらいの気持ちで読んでもらえればありがたい。
それではまず。
まだ、
「コミカライズ決定!」
も、
「アニメ化決定!」
も、
今ほど当たり前ではなかった頃。
Webで普通に読んでいた作品に表紙と挿絵が付き、
ある日、本屋の棚に並ぶ。
私にとっては、それだけでも十分な事件だった。
第二部の始まりは、
「なろう作品が本になった頃」
から振り返ってみよう。




