↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度妻をおとすレシピ 第11冊  作者: 奄美剣星(狼皮のスイーツマン)
覚書
PR
71/100

覚書/判らないことの証明:柴犬が猫を語る

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美「シュレーティンガーの猫」

昨日、「世界終わりに柴犬と」というアニメ(動画)を視聴した。「引きこもり」をしていた女子高生が、自分以外の人間がすべて滅んでしまった後の世界で、愛犬の柴犬と、アウトドアライフを楽しむ。この終末世界では、人類こそいなくなったが、それ以外の生態系は健在で、ヒロインは動物たち、さらには性格の悪い女神、間抜けな悪魔が登場しコミュニケーションをとるオムニバスだ(1)。その中で、「シュレーディンガーの猫」話題があった。


動画の柴犬は、ヒロインに、箱の中に猫を入れて密封し、毒ガスを注入する。しかし密閉した箱なので、結局、開けてみなければ、猫の生死は不明であると簡明に説明していた(1)。


もう少し詳しく言うと――

「シュレディンガーの猫」とは、オーストリアの物理学者、E=シュレーディンガーが考案した量子力学に関する思考実験。ラジウムがα粒子を放出すると毒ガスが発生する装置を猫とともに箱に収め、α崩壊の半減期を経過した後に猫の生死を問うもの。半減期を迎えた時点でラジウム原子核が崩壊してα粒子を放出する確率は50パーセントであり、量子力学的には崩壊していない状態と崩壊している状態は1対1の重ね合わせの状態にある。一方、これを猫の生死と結びつけると、生きている状態と死んでいる状態を1対1の比率で重ね合わせた状態にあると解釈される。量子力学的な効果を巨視的な現象に結びつける際に生じる奇妙さを指摘したものとして知られる(2)。


日本で初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士のエッセイ「シュレーディンガーの猫」では、結局、理解できないと述べてあった。――たぶん、先生は論旨が判らないというのではなくて、このアホくさい思考実験が、あまりにも有名になったのが理解できなかったのだろう(3)。


この手の、判らないということに関する思考実験は、現在、筆者が読んでいる雑誌「Newton」別冊でも紹介されていた。つまるところは、矛盾「パラドックス」の説明だ。「パラドックス」とは、一見正しそうに見える前提と、打倒に見える推論から、受け入れがたい正論を導くこと」である(4)。同書ではさらに、デレク・パーフィットの思考実験「火星遠隔転移装機」を紹介している。


仮に「遠隔転移装機」が発明されたとする。ある人を地球から火星にテレポテーションさせるのだが、このとき人体は、地球の身体は消えてしまい、火星に再生される。ところが事故が起こった。地球で消えるはずの人体が残ってしまい、地球と火星に、同一人物の記憶を有した身体が、都合二体生じてしまったのだ。果たして彼のどちらが、本物の彼なのか?――パーフィットは結局、「同じ人」の基準に正解はないと結論づけた。つまるところは判らないという話だ(5)。


 ノート2022117

引用・注釈:

(1)「【公式】世界の終わりに柴犬と」

https://www.youtube.com/channel/UC53enbRbZACHdAfbLq6AQ_Q

(2)「シュレーディンガーの猫」について:コトバンク「シュレティンガーの猫」:デジタル大辞泉「シュレーディンガーの猫」から同件引用している。

(3)湯川秀樹「シュレーディンガーの猫」(「湯川秀樹自選集」第4巻 朝日新聞社昭和46年)を、小学館「昭和文学全集」第33巻717-719頁で転載所収したものを引用した。

(4)高橋昌一郎・山崎沙紀子著『楽しみながら身に着く論理学的思考実験』(「Newton別冊」株式会社ニュートンプレス2022)の「パラドックス」26-27頁を引用。

(5)前掲書「同値」24-25頁を引用。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。