6 もう、逃れられない
※性描写あり。
「……何これ」
そこに映っていたのは……莉子の"寝顔"。
というかよく見ると、それは動画だった。
再生すると、そこには生々しい映像が……具体的には、
莉子の"痴態"が映し出されていた。
「…………最っ低……っ」
莉子は途中で気分が悪くなり、動画を止めて叫び。
しかも"記録"がそれだけではないことに気付き、そのまま嗚咽を上げしゃがみ込んだ。
「信じらんない信じらんない信じらんないっ」
「……マジで気付いてなかったんですね。
……まあ、朝まで目覚めないよう"細工"してたし。
無理もないか……」
莉子は寝ている間、綾音にレイプされていた。
「クスリ盛ったり、色んな"道具"使って弄りました。
先輩の身体、開発し過ぎておかしくなってるでしょ」
記録動画の数からして、最初の"泊まり"から毎回。
「可愛かったですよ~。先輩」
綾音は何を悪びれる様子もなく。
ただ、心底嬉しそうに笑いながら。
「…………最悪」
「まあ、私が女で良かったじゃないですか。
男だったらとっくに孕まされて高校中退、人生終了コースでしたよ」
うんうんと一人で頷き、彼女はそれから何か思い出したように続けた。
「……あ、スマホ壊しても無駄ですよ。
もちろんバックアップ済ですから。返してもらえます?」
莉子はしゃがんで顔を膝に埋めたまま、全て諦めたようにスマホを差し出した。
「……じゃあ、今日も泊まりますんで。
ああ、安心していいですよ。
"まだ"誰にも見せてませんから」
もう何も考えられない。
何も考えたくない。
「……でも、断ればどうなるか……わかりますよね?」
莉子は完全に生気を失い、魂が抜けたように沈黙し。
「分かったのかって訊いてんだろ?」
綾音がグイ、と髪を掴んで強引に面を上げさせ。
最早何を言う気も失くした莉子は、後輩を見上げながらゆっくりと頷いた。
「そうそう。それでいいんです」
綾音はそう言い、莉子の肩にそっと手を置いた。
「あなたはずっと、私のモノでいれば良いんですよ」
もう、逃れられない。
彼女に一生、良いように弄ばれるんだ。
「……入らないんですかぁ? 先輩」
莉子は目の前に続く、何度も見慣れたはずの室内が。
この時はいつもより真っ暗に思えて仕方なかった。
やがて共用廊下の明かりに照らされながら。
二人はそのまま玄関ドアの奥に消えていった。
――結局、その日もしばらくの間。
薄暗い部屋の明かりが点くことはなかった。