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5 絶好の機会

綾音の企み。

「……で、何」


 綾音は結局、家の前……というか玄関前まで来ていて。

 本当に大事な話だから、と何度も懇願され、その度に莉子は渋々承諾してしまった。


「何となく予想は付いてるから。手短にお願いね」


 実は今までも、他の相手からこの手の申し出を受けたことはある。

 だから何となく、雰囲気でわかる。


 しかしそれはつまり、この関係を完全に終わらせる絶好の機会(チャンス )でもあった。


 もう、今までのような"恋人ごっこ"は終わらせる。

 この子とは、それっきり。


 ……いつでも来い。


 莉子は相手の出方を窺い、ただ一つの返答を頭に浮かべながらそれを待っていた。


 ――しかし。



「……先輩、チョロすぎるでしょ」



 綾音はそう言い、薄ら笑いを浮かべた。





「……倉橋?」


「綾音」


「……は?」


「私に逆らった"罰"ですよ。

これからは名前で呼ぶように」


 綾音は急に"あの顔"になった。

 行為の最中にだけ見せる、莉子が逆らえないあの目付きに。


 豹変した彼女に一瞬だけ怯んだが、すぐに平常心を取り戻し。

 莉子はもう、後輩に怯える気なんて更々なかった。


「ふざけないで。早く要件を……」


「……先輩ホント、バカですね~」


 最早本性を隠そうともしない綾音が、呆れるように笑い。

 莉子は胸騒ぎがして、しかしそれの見当も付かずに困惑していた。


「……警察に突き出すわよ」


 担いでいた竹刀に手を回し、牽制しようとしたその時。


「……あんた、とっくに負けてんだよ」


 ――綾音は"それ"を見せ付けた。



「これなーんだ」



 彼女のスマホには、"何か"の写真が映し出されていて。


 莉子は黙ってスマホを受け取り、やがてそれが何であるかを理解し青ざめた。


 ――綾音が企んでいたのは。

恋人になってほしいという旨の告白などではなかった。


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