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「せやろ!日本の料理はカロリーも控えめで健康的だって世界でも認められてるもん。なあ?トオル」
「……うん」
カスミに話しかけられたトオルは、蚊の鳴くような声で答える。
「ユリ、そんなゆっくり食べとったら、十三時の結果発表に遅刻するよ」
「そうですね。遅刻しないように味わって食べますね」
カスミに急かされても、ユリはペースを崩さず、ご飯を美味しそうに頬張っていた。
「ユリはマイペースだからね。ま、そこが可愛いんだけど」
食事を終えたローランドはテーブルに肩ひじをつけながら呟いた。
「あ、ロンが今ユリに可愛いって言ったの、後でアンナに告げ口したろ」
カスミが、少し意地悪そうな表情を浮かべながら言うと、ロンは途端に焦り出した。
「い、今のは言葉のあやみたいなもんだから!アンナには黙っていてくれよ」
彼は泣きそうな顔でカスミに嘆願した。
「言葉のあやって何やねん!まぁ、いいわ。今回は勘弁したる」
カスミは得意げな顔でロンを見た後、目線を壁の時計に向けた。
「やばい。もう時間や!みんな、はやく本館に行くで!」
彼女が叫ぶと、ロンとトオルは慌てて立ち上がり、一目散にトレーを流し台に持って行く。
カスミが、ユリもと言いかけた時、ちょうど彼女は食べ終わり「ご馳走様でした」と両手を合わせていた。
大講義室には二月に中級試験を受けたユリ、アンナ、ローランド、カスミ、トオルの五名の生徒が座っていた。
教壇の横にクラーク教官が腕組みをしながら仁王立ちしている。
静まり返っていた講義室のドアが開き、背の高い黒髪の男性が慌ただしく室内に入ってきた。
彼はベージュのズボンにカジュアルな白シャツを着ており政府職員の身分証明カードを首からストラップで引っ掛けている。男性は黒のローファーを履いた足を忙しなく動かしながら教壇の前に立った。
「いやぁ、遅れてすまない。急な電話が入ってね」
彼は申し訳なさそうに頭を掻きながら部屋にいたユリ達とクラークを見渡した。
クラークは腕時計を人差し指で叩く。時計の針は十三時十五分をさしていた。




