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カエルの為にそれは在る  作者: オイペン19世
2章 仲間との出会い
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豹変


カツーン!カツーン!


「作業ヲ早くシロ!こレ以上の遅レは許さん!」


松明の焚かれた広場に、現場を取り仕切るオークの声が響き渡る。松明の炎を反射して、鈍く輝く水晶のような物体。どうやら、これがオーク達の目的らしい。


メタスメタルは、銅を黄色くしたような無骨な見た目だが、この鉱物は、違うらしい。


「コノ遺跡で、7箇所目ダったか。そろそろ、師団長クラスニハ行き渡っタだろう」


松明に顔を照らされた、そのオークの顔には、深い傷が刻まれており、身につけている防具から、上位者であることが伺える。


白く輝く鎧兜は、有数の硬度を誇るプラチナム製。その胸の中心部には、今採掘を行なっている水晶が、研磨され埋め込まれている。



「もうスグ。もうスグダ。我々が表舞台にデるのだ。豚と蔑まサレ、疎まれて来タ我々が、この世界をコワす」



「待てえぇいっ!!」


突如、広間に声が響く。


「ヌッ!?何者カ!?」

指揮官である、オークマスターが声の方向に振り向く。


そこには、人間の女性が3人いた。


「ひとぉつ!悪の華咲く試しなし!」


「ふたつ〜。せいぎのてっついくだせしは〜」


「み、三つ...清らかなる乙女の..ゴニョゴニョ...」


一人一人がポーズをとりながら決め口上を述べていく様は、地球の戦隊者や時代劇を思い起こさせた。


「ちょっと!アヴァっち何言ってるか分からないよ!」


「こんなの言える訳ないじゃん!しかもオークマスター居るじゃん!上級中位じゃん!ヤバイじゃん!」


涙目でアヴァが、ジタバタと地面を踏みながら叫んでいる。


「華咲くチーム「れでぃろーず」けんざん」


「ちょっと!マデりん早い!それは最後だよ!」



人間3人の娘達のかしましい様子を、ジッと見ていたオーク達であったがオークマスターの


「あのメスどもは、お前達の好きにしていいゾ」


という言葉に「プギイイィィ!」と歓喜の声を上げながら、嬉々として3人に襲いかかって来た。


上級下位のオークを含めた、50匹程度のオークが、3人の立つ通路に殺到する。


「ひいいいぃ!!」

アヴァの悲痛な叫び声が広間に響く。3人は一目散に逃げ出した。


そして、1匹の虹色のカエルが、広場に躍り出る。


「ヌシ。本当にやれるのか?」


「分からない、けどやってみる!」


バッとカエルは四つん這いになった。『ソレ』の使用者と同じように。


「大地を抉る地よりの叫び【アースクエイク】!」


突き進むオーク達の背後に、亀裂が生まれ、足元が大きく揺れる。


「全てを焦がす煉獄の炎【ヴォルカニックバーン】!常闇より出でし絶望【ブラックホールカノン】!その渦は全てを呑み込む【アルティメットスクィーズ】!絶望の竜巻【ディスペアートルネード】!」


五つの上級魔法が、オーク達を取り囲む。逃げ惑う者、魔法を掻き消そうともがく者。様々だった。しかして、五芒星は結実する。


「【ペンタグラム】!」


50を超えるオーク達の頭上から、五色の光が降り注ぐ。


その光の暴力が過ぎ去った後、立っている者は皆無であった。低位のオーク達は、床のシミとなり、辛うじて上級に達していた者でさえ、意識を失い、虫の息となった。



「うーむ。40点じゃな。見よう見まねで使用出来るのは、賞賛するが、威力、精度共に低い。上級下位のオーク程度、跡形無く吹き飛ばさねばな。ネルラの小僧は、それくらいは易々と出来たぞぃ」


かつての同胞の技に対し、辛辣な評価を下すベロ。ソレもそのはず。ベル=ゼブブその人の愛弟子とさえ呼ばれていた四凶蟲のネルラ。


その天才性は、蠱毒の城建城以来と言われていた。


「精進するよ。さて、残るは...」


目前の敵を睨む。ペンタグラムの範囲外。そこに巨大なオークが、ワナワナと震え立っていた。その震えは怒りか、恐怖か...。



「貴様!亜人カ!?亜人が、ナゼ人間のミカタをするか!!我々オークも、亜人に属スル者!同胞を殺メテ、ナントするつもりか!?」


「えっ?!オークって亜人なの?」


カエルが動揺し、3人娘へ振り返る。


「カエルっち!」

「前!」

「危ない!」

「馬鹿者!」


「ッ!?」


カエルの耳を切り裂くような、轟音と衝撃が同時に来る。


(斬られた!?)


そう錯覚するほどの痛みが、カエルを襲う。


見ると、ベロが刀を使い、斬撃そのものは防いだ。だが、ベロの力では、防ぎきれない程の衝撃。


オークマスターを見る。

肩に担がれた巨大な戦斧。

禍々しく光る紫色の刃と、真ん中に心臓のような、臓器に見える何かが脈打っている。


「コレを受けルとは、ヤるな亜人。我ラが皇帝陛下より賜りシ12振りの一つ『戦斧スラッシュペイン』衝撃は痛ミとなり、身体ヲ蝕む。貴様ノ舌は、既に死に体ダ」


慌ててベロを見やる。舌はダラリと垂れ下がり、動かそうとしても動かない。


「ベロ!!ベロ!?」


「騒ぐな...ワシとお前は同体...死ぬ訳が無いが...魂に響きよる...少し....休ませてもらうぞ...」


そう語ると、ピクリともベロは動かなくなった。


「カエルっち!ベロっち大丈夫なの!?」


「分からない!けど..!ベロ抜きで、やるしか無いようだ」


グッと四肢に力を入れる。


ペンタグラムは、一度見せてしまった。恐らく次は逃げられるか、防がれるはずだ。


「カエルさん!私達が援護を!」


「アヴァちゃん、ダメ。これ以上私達が近づくと、足手纏いになる」


「そんな...でも...!」


ココットは、首を振る。


「私達『2人』には、なにも出来ない。だから!!マデりん!!」


ココットは、マデリンに薬瓶を投げ渡す。


「やっちゃっていいよっ!」


「ほい」


グッとマデリンは、瓶を開けて一気に飲み干した。


「...『アレ』やるんだ...?」


「今やらないで、いつやるの?今でしょ!」


カーッと音がするほどの勢いでマデリンの顔が紅く染まっていく。そして、地面に転げまわる。途端、大人しくなってしまった。


「....ウィッ!...ヒック...ッ!!」



「始まった...!」


ガバッとマデリンが顔を上げる。朱色に染まった頬と、座った目。それは『酔っ払い』のソレであった。


「ヤるぜえええぇッ!!アタシはやるぜええええぇ!!」


両手を広げ、マデリンは宙空に叫ぶ。突如広がる強者の気配に、切り結んでいたカエルとオークマスターは、目線を向ける。


少女が、スッとシミターと短剣を抜き放った。その直後、埃がフッと舞った。


目で追えぬほどの速度で、飛び出した少女は、オークマスターの背後へと出現し、短剣による、刺突を繰り出した。


完全に不意を突かれたオークマスターは、対応出来ない。


「もらったぜぇ!」


パキッ!!

そんな音を残して、少女の短剣の刃は宙を舞う。完全に入ったと思われた刺突は、オークマスターの堅牢な鎧に弾かれ、半ばで折れたのだ。


「ヌナッ!?」


驚く少女。だが、驚いているのも束の間、また再び、姿を消すように移動する。少女が立っていた場所には、床が抉り取られる程の斬撃の跡が残った。


「チィッ!ちょこまかト!」


オークマスターの戦斧が、空を切り、そしてまたカエルへと向けられる。


「厄介な鎧着込んでやがるぜ...おいぃ!!カエル野郎!隙作ってやるから、魔法でも刀でも叩き込め!」


「あ、あぁ!」


雰囲気の変わったマデリンに、若干気圧されながら、カエルは応える。

カエルも、速度では上回っていても、その鎧と、練度に打つ手を見出せなかったところである。


「そうはさせんゾ。武技(スキル)《スイングラッシュ》」


暴風の如く、戦斧の振りが速くなる。マデリンには目もくれず、カエルへ向けてのラッシュ。


(あの小娘ノ攻撃は、鎧兜に阻まれ、オレには届かナイ。だったら、このカエルを潰セバ良い)


「テメェ!何処に目つけてんだゴルァ!!」


横っ腹から、マデリンがシミターを振りかぶって飛び掛かる。シミターは、折れる事はないが、軽々と弾かれてしまう。


「チィッ!だったらこうだ!!《鎧通し》!」


鎧の繋ぎ目をピンポイントで狙った攻撃を放つ。だがそれさえも、繋ぎ目に使われた素材の強固さに弾かれる。


「なんつうタフさだよっ!」


「マデリン!」


カエルからの掛け声に、振り向くと、一振りの刀が飛んでくる。それを中空で掴み取り、素早く抜く。


普段はベロが使っている一振り。

名工「甚兵衛」の一振り、『三星刀』である。


「ウラァッ!」


刀が煌めき、繋ぎ目を的確に捉える。完全に防御を捨てていたオークマスターの腕から、鮮血が噴き出した。


「プギイイィィ!!」


「すげぇっ!コイツァすげぇぜカエル!


攻撃が通る。そう分かるや否や、マデリンの攻撃は苛烈さを増す。身体中から、浅いとはいえ傷を負わせられるマデリンを、無視出来なくなり、攻撃をマデリンへと向ける。


ゴワンッ!ゴワンッ!


耳元に轟音が轟く。おおよそ、無秩序に振り回されいるだけに見えていた攻撃が、どれも一撃必殺。急所を的確に狙った斬撃である事を、マデリンは思い知った。


(なんつう攻撃だよ!これを捌いてたのかよカエル野郎!この爆撃のような攻撃に耐えるこの刀も、ナニモンだこの野郎!)


マデリンは、必死の形相で耐える。二刀流のディフェンダーが、一本の使い慣れない刀で、防ぎきれるほど上級中位の攻撃は、甘くなかった。


グジッ!!


嫌な音が響き渡る。肉を裂かれる音。


目を向けると、左大腿部の肉があらかた持っていかれている。


「いづっ...!チックッショウッがっ!!」


バランスを大きく崩したマデリンに、巨大な戦斧が迫る。


(やられるっ!)

(獲っタ!)


しかし、マデリンの目前に突如として『虹』の結界が出来上がる。


【アルカンシエル】と呼ばれるその魔法は、カエルの誇る絶対防御。それが、オークマスターを包み込み発動している。


「ムゥッ!?」


「マデリンありがとう!完成だ」


「遅いぞカエル野郎っ!」


オークマスターが、斬撃をアルカンシエルへと叩き込み続ける。


「この程度ノ防壁なゾ!!」


しかし、防壁の外側で、突如地割れが起こる。


「クッ!?先程ノ魔法か!だが、耐エ切ってみせル!《エスケープ・フロム・ペイン》!」


ダメージを吸収するスキルをオークマスターは展開。斧を地面につき、耐えきる体制をとった。


炎が巻き上がり、水が空間を満たす。

闇が辺りを包み、風が唸りを上げる。

オークマスターの周囲の天変地異が、五芒星を描いた。


「さっきのは50匹が対象。だがコレは、お前1匹だけを標的にする!行くぞ!!【ペンタグラム】!」


五芒星が発動した瞬間、アルカンシエルが搔き消える。超常の熱量が、オークマスターの頭上から降り注いだ。

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