その3
そんなことを考えていたら、なぜか呆れた顔で僕を見る三人。だから、なんでそんな顔をするのさ? 変なことは言ってないはずだけど?
「姫。納得してないようだが、俺たちが言ったことは全て事実だ。それと一年の学級委員は全員、姫の親衛隊として学園に登録されているから、これからも安心して学園生活を送れるぞ。何かあれば俺たちが……」
ちょっと待て。またサラッと聞き捨てならないことを櫻森くんが言いやがりましたよ。もう一度、確認のために櫻森くんにたずねた。
「ちょっと櫻森くん! 今、また聞き捨てならないことを言ったけど、どういうこと!? 冗談だよね、そうだと言ってくれ!」
僕が櫻森くんの胸倉を(少し背伸びして)掴み、すごい剣幕で話を遮ったから面食らった顔をしたけど、冗談ではすまないことを君が言ったんだよ! 自覚ないの!?
「えっ? ああ、安心して学園生活を……」
「違うっ! その前っ! 一年の学級委員が、なんだって!?」
「えっ? あ、ああ、親衛隊だから安心して……」
「はあああぁ!? 親衛隊!? 何それ、どう考えてもおかしいでしょう! 僕なんかに親衛隊? 何がどうしてそうなった!? 大体、誰の許可を得てるんだよ!」
おいおい。ここでいう親衛隊っていうのは、美のカリスマたちを崇め奉る無償の下僕のことでしょう? むしろ彼らに排除されてもおかしくない、美の欠片すらない僕に親衛隊ができた? ありえない、絶対にありえない! それに渋谷くんは中等部からの親衛隊持ちなのに、その人が僕の親衛隊員? 僕の学園生活、終わったな。明日から僕は学園で、どうやって生きていけばいいのだろうか。
「そんなに驚くことかなぁ。福田くん、自分の素顔を今一度、確認した方がいいと思うよ?」
櫻森くんとの会話を聞いていた渋谷くん。なぜか半眼の無表情でこちらを見ていますが、その顔は一体どういう意味があるのでしょう。それと僕の素顔を再度確認したところで何が変わるのか、簡潔に述べていただけますか?
「渋谷くん。それを、てっちゃんと僕は何度も試してるんだよ。あのさタッシー、君の眼鏡無しの写メ、(コミケの)イベントで撮って速攻見せたよね。全然、信じてもらえなかったけど」
「いやいや、鶴間氏。とてつもなく可愛く加工された画像を見せられてもねぇ。綺麗な二重に、きゅるんとした、つぶらな漆黒の瞳。少し小ぶりの鼻にピンク色のプックリした唇。それらがバランスよく配置された色白の肌。まるで子アザラシのようなあどけなさが残る純真無垢さが全面に押し出された某有名メーカーのティッシュのパッケージのような容姿を僕だと言われても、到底信じられません!」
陰キャな僕がアイドル並みの容姿なはずないでしょう! 病的に白い肌は太陽の光を浴びることが少ないからだし、(昔、母さんが教えてくれた外国人宣教師タレントのように)眼鏡のせいで目が大きく見えるだけ。だから鶴間さんが撮った写メの人物が自分だと思えるわけがない。というか、うちの両親から写真のような人物が生まれるはずがない。姉さんだって十人並み……よりかは少し上だけども。だから絶対、写真の人物は別人だと断言しよう!
「そもそも僕の許可なく、なんで親衛隊ができてるの? 渋谷くんたちは親衛隊持ちでしょう? その君が僕の親衛隊員になったら君たちの親衛隊から反感を買うじゃん! 実はドッキリだよね? 僕、まだここに来て数ヶ月しか経っていないのにハブられるの?」
何度も言うが学級委員に選ばれる人物は、もれなく親衛隊持ちだ。だから僕みたいに外部生で容姿に難ありの人間に創設される根拠がない。それに彼らの親衛隊に要注意人物として認定でもされたら、僕がここを受験した意味がなくなるじゃないか! BLライフを満喫できない櫻森学園なんて、ただの堅苦しい豪勢なエリート養成所だよ!
「ああ大丈夫、問題ないよ。僕以外の学級委員たち、そして親衛隊員は外部生である福田くんを(より近くで愛でるために)全力でサポートすることを第一に考えているから。僕らは(自分の美しさを自覚してない)福田くんを(生徒会長のような欲望まみれの人物から)守るために活動しているから安心してね!」
キラキラのエフェクトを飛ばす笑顔の渋谷くん。だから貴方たちは、そのキラキラを、どうやって取得したんですか?
なんか腑に落ちないが、渋谷くんに真剣な眼差しで語られると、僕が我が儘を言っているように感じるので、この話は後日、改めて考えることにしよう。 でないと僕の思考回路はショート寸前なんですけど!




