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目的はなに?



 話しかけられた料理人は、その声を聞いた途端目の焦点が合わなくぼぅっとしたように見えた。


「私は見習いなので……わかることは少ないですがそれでも良ければ」



 

 見習いと名乗った彼の言葉に、扉の陰に身を隠していたクレイスくんが飛び出そうとしてしまう。



「……っ、何の情報目当てだ? あの料理人もっ……!」


「待ってください! あの人様子が変です。シュシュちゃんの目的を知るためにも彼女が何を聞き出そうとしているのか泳がせたほうが良いのでは?」



 そりゃあ重要機密とかそういったものを漏らされたら大変だけれど、料理人見習いを自称する彼がそんなに大事な情報を持っているとも思えない。

 それに、シュシュちゃんの作り声を聞いてから彼の様子が変なのはやっぱりヒロイン特有のチート能力とかそういったものだろうか? その辺も確かめなければならない。



「ルルの言う通りだわ。クレイス、少し待って」



 ユリーシア様が私たちの前に片腕を突き出して出ていけないように制止する。正直私の力ではクレイスくんを止められそうになかったので助かった。


 これで、シュシュちゃんの目的が分かるかもしれないと固唾を呑んで見守っていると──



「難しいことじゃないわ。公爵邸で使っている珍しい食材。それを何処から仕入れているのか教えてほしいの」



「………は?」



 間抜けな声を出したのはクレイスくんだ。ユリーシア様も同様に声を出しそうになったらしいか、口元を掌で覆って必死に堪えていた。


 かくいう私も、こんな大騒ぎに発展させてまで聞きたかったことがそれなのかと己が耳を疑っていた。


 けれど一呼吸置くと今まで見えていなかったものも見えてきた。呆気に取られているエール姉弟を尻目にどうやらクレイスくんの貞操も私の命も危なくはなさそうだと判断した私は堂々と厨房に入っていくことにした。



「ルル!」


「ルル! 危ないわ!」



 二人が口々に止めてくれるけれど多分危なくはない。私のなかでのシュシュちゃんのイメージはは今この瞬間から懐かしの味を求めて暴走する大喰い令嬢となったから。



「貴女っ……!」



 おお、相変わらず敵意をビシバシ感じる。けれど睨んでくるだけでやはり危害を加えようとかそういうつもりはないらしい。



「ごきげんよう、シュシュちゃん」


「ちゃん付けで馴れ馴れしく呼ばないでっ」



 そうは言われてもこんなにわんぱくなシュシュちゃんのことを様付けとかウィゼル男爵令嬢なんて畏まって呼ぶのは抵抗がある。



「シュシュさん。ルルシアが侯爵令嬢なのは知っている? 男爵家の貴女はもう少し態度を改めた方が良くってよ」


「大丈夫ですユリーシア様。気にしていないので」


 シュシュちゃんは多分私より前世の影響が色濃く残っているのだ。だから、家格が上の者への態度などこの貴族社会のなかでは特異な行動をしているように見えるのだろう。

 人様んちに無理矢理押し掛けて突入するなんてのは流石にどの世界線でも非常識だとは思うけれど。



「ねえ、シュシュちゃんってクレイスくんに夜這いに来たんじゃないの?」



「夜這っ……そそそそんなふしだらなことするわけないでしょおぉっ!!」



 あ。野太い。地声に戻ってしまった。夜這いじゃなかったとしてもクレイスくんに好意を寄せているとしたら今ので重厚感あるその声がバレてしまったのだけれど、大丈夫かな。ユリーシア様もクレイスくんもそんなことで人を判断したりはしないだろうが、驚きのあまり目を丸くしている。

 シュシュちゃんはといえば夜這いというワードがよほど衝撃的だったらしく顔が真っ赤だ。



「……おい、変な女」


「私のこと!? 確かに変な声かもしれないけどっ」




 目の前の女の子にそんな呼び掛けをするクレイスくんもまあまあ変人だ。まだお前だとか貴様だとか呼ばれた方がマシだろう。



「声はどうでもいい。変な女が俺のことを好きじゃないのは分かっていた。なのになんで付き纏う」


「クレイス、その呼び方はやめなさいっ」


「家に強行突破で侵入してくるのは変な女だ。だから変な女と呼んだ。変な人間の方がいいか? 俺もこの変な女を異性として見てはいない」



 正論と暴論を一気に詰めたようなクレイスくんの発言にユリーシア様が頭を抱えている。なんだか哀れだ。



「……勝手に入ってきちゃったのはごめんなさいだけどっ。こうでもしなきゃお家に入れてもらえなかったから!」



「……? 貴女の目的は我が家に招かれることでクレイスには興味がないという認識で合っているの? 誰かに我が家の内情を探ってこいだとか依頼された? そんな政敵になり得るような相手は居なかったはずだけれど……それに、そこまでして得たかった情報が厨房にあるとは思えないわ」



 ユリーシア様にとって情報過多過ぎたらしい。抱えた頭の位置がますます低くなっている。


「ユリーシア様、ユリーシア様。多分このお家に招かれたかったっていうのはシュシュちゃん自身の願いです」


 私にはなんとなくシュシュちゃんの目的が見えていた。それでもこんな無茶苦茶しなくても……という気持ちは拭いきれないが。そう、シュシュちゃんはきっと。



「日本食を食べさせてもらいたかったんだよね! 私がユリーシア様とクレイスくんにお願いしてあげるね!」



「そうだけどちょっと違ううぅっ!!」



 親指をぐっと立てて前世式のコミュニケーションを試みたのだが、あまりシュシュちゃんの心には響かなかったようで残念であった。


 タイトルちょっぴり変えました。ということで今日は二回目の投稿。


 休日になるべかく書き溜めて普段もちょっとずつ進めて……とやっています。最低一日一投稿したいと自分に誓う日々です。


 もし宜しければ評価やブクマ、感想にリアクションにレビューなど……なんでも飛び跳ねて喜びますので、図々しくもお願いしてしまいます。


 いつも読んでくださる方やリアクション(と呼んでましたがもしやいいねが正式名称だったりしますか?)くださる方ありがとうございます!


 この先から恋愛模様にも焦点を当てていきたいなぁと思っております。ぜひぜひ、これからもお付き合いくださいませ。

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