異聞録 ??
日記帳の内容がわからない。
見たことの無い字で毎日書いているから昔のようにミュリーが過ごしたその日を把握することが出来なくなってしまった。
何を考えているのか、何をされたのか、誰に何を思っているのか。知りたい、知りたい、知りたい。
眠り姫症候群を発症から字と内容が荒れていたが、ミュリーがそう言うのならそうなのだろうと納得してきた。ミュリーのことならなんでも受け入れる自信がある。
日本、高校生、pj、毒親、どれも知らない単語だった。
内容もひどい、子供の考える単語ではない。でも創作でも妄想でもなんでもいい。どんなミュリーだってミュリーで、愛せる。愛しくてたまらない。
傍目不幸せでも、ミュリーが幸せと感じるならそれでいい。それがいい。こんな引き返せない程に歪んだ愛なんて汚いものをミュリーに見せたくない。どうか気づかないで。
愛は呪いだ。まず目を奪われ、心を奪われ、思考回路さえ奪われ、何もかも奪われ尽くして、自分のものであるはずの全ては相手のものになってしまう。そして狂う。
自分のことを狂っていると感じるのは、自分がまだ正常な感覚を持っている証だろう。大切にしたいものだ。
ベッドに目を向けると、すやすやと眠るお姫様がいる。ミルクに紅薔薇の花びらを浮かべたようなコントラスト。この肌と唇は人を惑わせる。彼女が目を開けばその深海のような瞳に溺れる。
つんと気の強そうな唇を指でなぞる。この奇跡のような一瞬を切り取れたならば。
そっと口付けてもミュリーは起きない。童話に則ればそれは他に王子様がいるからだろう。
チャンスなんてない、ないのに、なぜこうも未練がましくなってしまうのだろうか。
自分に嘲笑する。
日記帳を元あった場所に立てかけ、敗者はとっとと退散するとしよう。
それじゃあ、ミュリー、また夜にね。




