王伝編集官 異伝 ロビーオ&メイリア①
マリーの店からの帰り道。ログサと別れ寮までの途中、少し気になってメイリアにさりげなく聞いてみた。内心穏やかじゃなかったけど。
「メイリア」
「なーに?」
「さっきのお兄さんずっと見てたけど、どうして?」
少しづつ夜の準備を始めた空をながめながら、ゆっくり口を開いた。しばらく何か考えているようだけど、心配するような内容に見えないのでほっとした。そう思ったとたんメイリアの頬は緩み、それを両手で隠したが目はうっとりしていた。なんで!?
「なんかいいなぁって・・・」
言葉に詰まる。あの時のように。目の前に炎の熱がよみがえりうつむいてしまった。後で思い出すとそれは違う熱だったんだけど。聞けない、どういいのかなんて。また後悔するかもしれないのに。ロビーオはそんな後ろ向きな気持ちを振り払うように首を振った。少しくせのある金の髪も不安げだったが空を見ていたメイリアは気がつかない。ふふっと笑い「一人だと無理かなって思ってたんだけど」と目を閉じてその光景を見えているかのように呟いた。
「二人だったら・・・・」
「え?」
「あ、ごめんなさい。そうよね、ロビーオにも予定あるものね」
「そうじゃなくて・・・その」
「どうかしたの?」
メイリアは不思議そうにこっちを見ている。気づいてないだろう。今の言葉がどれほどうれしかったか。君の心の中に僕がいるのを感じる。お菓子作りがなにより好きなのに、僕といるときはちがう話題をしてくれた。初めて会った頃は思うように笑えなかった。ラディ王子は焦らなくていいと言ってくれたけど。そうしてみんなと過ごすうちに、ある日の放課後メイリアに相談された。
「ねぇ、ロビーオ君。アクアちゃんと一緒に手伝って欲しいことがあるんだけど」
「どんなこと?」
「下級生にお菓子作り教えるんだけど、20人も申し込みあったから一人じゃ対応しきれなくて」
「うん、いいよ。」
「ありがとう、よろしくね」
この日からメイリアと少し仲良くなれたかな。僕にはまだメイリアみたいにやりたいことがないけど、いつか彼女のとなりに立てるようになりたい。そのためにもっと色んな事を学ばないと。すると制服の胸ポケットがもぞもぞ動いて、中からつぶらな目をした僕の相棒が見つめている。最近シッポも生えてきて、なかなかかわいい。あ、この子が大きくなったら彼女とどこでも行けるようになるかなぁ。
ロビーオとシッポちゃん(あ、みんなは毛玉と言ってるけどシッポがかわいいからこっそりそう呼んでる)が戯れてる。かわいぃ・・・ピンクのもこもこにちっちゃい目。紐のようなしっぽ。思わずシュークリームで再現してみんなに配りまくったよ。今しか見れない貴重な姿だもんね。その際ピンク色のシュガーパウダー開発したらラディ君が嬉々と飛びついた。なんでも
「これの色数増やして金粉・銀粉と各国の紋章の型紙を見本に付けて送る。まずは知ってもらわないとね」
「それからどうやって儲けるの?」
「失礼な。初めは投資だよ。メイリアもまた講座頼むね。卵白と混ぜてアイシングにしてクッキーに絵を描いてもらって。」
「それだとクッキーは予め作ったほうがいいね。好きな色選んで。絵は見本あり?」
「絞って描くからシンプルに。初等部のデザイン科に任せるよ。中等部には贈答用のを頼むから」
「そろそろお金のにおいがしてきたね」
「まぁね。ちゃんと君の野望に還元させるから」
人聞きの悪い。ちょっと甘さ控えめな夢みてるだけだって。ただ最近はそこに一緒に居たい人ができたかな。
現時点で両思いなのかどうかは微妙。
ロビ君のがんばりしだいですかね。