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ソラモヨウ  作者: SIN
9/88

9片

 10月4日、その日は中秋の名月だった。

 バイトが休みだった俺は、団子を買いに行く前に毛むくじゃらにメールを送る事にした。内容はありふれたもので「一緒に夜空を見上げよう」だ。

 返ってきたのは「分かった」の文字。

 こうして毛むくじゃらがやって来たのは夜の11時ちょっと前。

 コンコンと窓を叩く音がして、外に出て、パッと空を見上げると、そこには見事なまでの雲り空が!

 「フッ」

 軽く笑ってしまった。

 「こんな事ある?」

 毛むくじゃらも一緒に月明かりさえ漏れない曇り空を見上げながら呆れた風に言う。

 「建物で隠れてるだけかも」

 と、ウロウロと歩き回ってみたが曇り空である事に変わりなし。

 自動販売機で缶コーヒーを買って、飲みながらウロウロ。

 やっぱり月は少しも見えなかったので俺の部屋で少しばかり時間を潰す事にした。とは言っても一緒に遊ぶわけでもなく、毛むくじゃらは人の布団を占拠して仮眠をとり、俺は俺でパソコンに向かう。

 夜中の3時頃、再び2人で外に出た。

 2人して見上げた空、そこには、相変わらずの曇り空。キョロキョロと見回してみた所で月明かりも見えない。

 「もうな、分かってた。名月だろうが流星群だろうが、結果は一緒や」

 曇り空と分かってて来たのか……じゃあ、十三夜も宜しく!

 こうして訪れた11月1日、十三夜。

 急激に冷え込みが激しくなったこの頃、俺は寒暖差アレルギーで鼻水が止まらず、花粉症の薬を飲んで如何にか凌ぎつつ、以前から不調だった洗濯機が完全に壊れ、水を大いに吸った夏布団を持ってコインランドリーに行き、使い方が良く分からないコインランドリーに困惑している所、全く知らないご婦人が使い方を教えてくれる。と言う慌しい日を過ごしていた。

 こんな忙しい日の終わりには、綺麗な月が見たい。いや、慌しくなくとも見るつもりではいたのだが。

 そこで問題なのは毛むくじゃらの雨男っぷりである。

 いつものように「空を眺めよう」などと言ってしまったら最後、雨男センサーが働き、見上げた空に雲が広がるだけになるだろう。

 少し考えた末に出た答えは、夜の11時に行き成り「とりあえず来て」とメールする事。

 コンコンと窓を叩く音がして、外に出て、恐る恐る空を見上げてみると、そこには見事なまでの月が出ていた。

 雨男センサーって、本当にあるのだろうか?

 「なに?」

 不思議そうに尋ねてくる顔を上に向け、

 「十三夜」

 と。

 「あー。片見月はアカンのとちゃうん?」

 まさか毛むくじゃらの口から“片見月”が出るとは思わなかったが、話が早い。要するに十日夜も宜しく!

 時は流れて11月27日、十日夜。

 雨男センサーの事をすっかりと忘れていた俺はまた毛むくじゃらを「一緒に空を見上げよう」と呼び出した。

 コンコンと窓を叩く音がして、外に出て、パッと空を見上げると、そこには満天の星空!

 綺麗な空を見上げ、

 「あれオリオン座やろ?」

 「そう。で、あれがふたご座で、あれが冬の大三角形」

 とかなんとか星を堪能して気が付く。

 月は何処だ?

 キョロキョロと見渡しても月は見えず、2人でウロウロと広い場所を求めて歩き出したのだが、広い公園に入っても月は何処にもなかった。

 「ちょっと待ってや」

 スマホを取り出した毛むくじゃらは、星座とか月とか、太陽の位置が見られるアプリをインストールし、スマホを空に翳した。

 「どう?」

 月を探すようにウロウロして、ついに画面上で月を見つけた。それは俺達が立っている場所から少しばかり斜め下。

 「沈んどる!」

 それでも片見月は縁起が悪い。由来を調べると特に気にするような感じではなかったが、縁起が悪いと言われると気になってしまう。

 なので「十日夜」と検索をかけ、出て来た月の写真を毛むくじゃらと2人で見た。

 「……これでえぇなら、次からもこれでえぇやん」

 「これは簡易的な?応急措置みたいな?そんなんやから」

 と、言う事なので、来年の十五夜も宜しく!

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