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ソラモヨウ  作者: SIN
88/88

88橋

 コロナウイルスが流行り、不要不急の外出を避けるようにと言われてからこれまで、俺は本当に不要不急の外出を避け、スーパーかドラックストア、備品が壊れた時のホームセンター、ディスカウントショップにしか足を運んでいない。

 もちろん移動は徒歩か自転車で、3密も守っているし、初期の頃からマスク使用だ。

 元々インドア派だったこともあって、特にストレスは感じていない筈なのに、それでも他の部分で徐々に神経が削られていく。

 このままでは滅入ってしまうと考えた結果、俺は友人達と会う事にした。

 もちろん実際に会う訳ではないし、絶対に途中で「誰と喋ってんのじゃ!」と怒鳴り乱入されるウェブMTGでもなく、チャット。

 ただのチャットではなく、オンラインゲームにログインしてのチャット機能。

 キャラクターを自分で操作するから3人集まって座れば疑似的な集会をしている雰囲気が味わえるし、アクション機能を使えば「手を振る」「お辞儀」「ダンス」「笑う」などの動きも出来るので、文字だけの殺伐としている感じもない。

 こうして集まった毛むくじゃらと1代目と俺。

 1代目とはいつくらいぶりになるのか分からないほど久しぶりだったが、変わらず元気にしているそうだ。

 喋ったり、ゲームをしたりと3人で過ごした後、毛むくじゃらの目が限界にきたことでお開きにしようかという流れになった。

 「おやすみー」

 とログアウトして消えた毛むくじゃらのキャラクターと、バイバイと手を振るアクションをしている1代目のキャラクター。

 そこで俺も手を振るアクションをしたのだが、フッと1代目が座るものだから、俺も手を振るアクションをキャンセルして座ってみた。

 「久しぶりに、いきましょう」

 「どこに?」

 「笑かし劇場」

 あぁ、懐かしい。

 笑かし劇場とは、昼寝をしようとする度に課せられる、1代目による「俺を笑わす事が出来たら寝ても良いですよ!」との一種の試練みたいなものだった。

 しかしだ、急にそう言われても非常に困る。

 しかも口頭ならばまだ言い方や表情で何とか出来る部分もあるが、文字とゲーム内アクションのみで表現しなければならない。

 「笑ったらアカンで」

 「はい!」

 笑わせるには素早さが必要になると思った俺は、とりあえず素早く打ち込むために

 「昔々」「大昔の」「ことじゃった」

 と、物凄く細切れに打ち込んだのだ。

 1代目も慌てた様子で「はい」と打ち込んでくる。

 もはや、この状況が既に面白い。

 「まだ」「地球上には」「何もない程」「大昔の事」

 「はい」

 「お爺さんは」

 「w」

 分かりやすく笑った!?

 え?笑った?

 そして1代目のキャラクターは「笑う」アクションをしているが、思い出したかのように座ったのだ。

 「はい」

 そして続きを催促してくる。

 「お爺さんは」「山に」「芝刈りへ」

 「はい」

 「おばあさんは」「宇宙に出て」

 「w」

 おばあさんもおるんかーいってツッコミが聞こえてきそうな「w」が打ち込まれた。

 しかし、1代目のキャラクターは座ったままだ。

 仕方ない、続けるとしよう。

 「おばあさんは宇宙に出て」「おじいさんのパンティーを」「探していました」

 「パンティーwwwwwwwwwwwwwwしかもじいさんwwwwwwwwwww」

 笑ってるな、これは絶対に笑ってるよな?

 「おやすみなさい」

 こうして俺はバイバイとアクションをしてからログアウトしたのだった。

 コロナの影響で娯楽が減ったからなのかどうか、1代目の笑いの沸点がさらに下がっている気がした。

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