82片
催眠術に断念した俺が次にやってみようと思ったのは、メンタリスト。の、真似事。
いくつかの動画を見て、その解説を聞いて何となく理解出来たような気になった俺は、後方でノーンビリとゲームをしていた毛むくじゃらに声をかけた。
「今いける?」
「ちょっと待って、今ボス」
15分ほど大人しく待ち、毛むくじゃらがこっちを向いた所で説明を始める。
「ここに青色と赤色のケースがあります」
そう言いながら青色と赤色のケースを毛むくじゃらに手渡す。
「うん」
「心の中だけで、どっちかを選んでください」
「んー……決めた」
決まった所でケースを受け取り、青色のケースを右手に、赤色のケースを左手に持ち、
「今から、どちらを選んだのか当てたいと思います」
こう毛むくじゃらの目を見て宣言した後は、
「青色か」
と、ゆっくり言いながら右手を上げて下ろし、
「赤色か」
と、ゆっくり言いながら左手を上げて下ろす。
青色のケースの時は一瞬だけケースを見た後スグに俺の顔を見て来たが、赤色のケースの時は少しだけケースを目で追った。
「分かった。赤色」
「えぇ!?なんで?え、なんで?」
当てられた事に動揺したらしく、何度もケースを見てはタネを探そうとしているが、これは手品でもなんでもないのでタネも仕掛けもない。
特にタネあかしもせず、俺は数字に強い毛むくじゃらに物凄く簡単な問題を出す。
「1たす1は?」
「2」
ピシッと真っ直ぐにこっちを見ながらの即答。なのでもう1問。
「2たす2は?」
「4」
再びの即答。
「6たす4は?」
「10」
自信たっぷりの即答で3問答えた毛むくじゃらに、今度は少しばかり苦手であろうと思われる問題を出した。
「太陽系全部順番通りに答えて下さい」
「水金地火木土天海王」
即答ではあったものの、一瞬視線が左上に流れた。
無意識の動作なのだろうが、こうして注目してみれば中々奥が深くて面白い。いや、それよりも大事な事がある……王ってなに!?