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ソラモヨウ  作者: SIN
81/88

81面

 去年の11月から家事は親父の担当となり、俺は生活費を支払うべく就職活動に励んでいる。

 一向に採用される気配がないので、元々狭かった肩身が更に狭くなり、入浴すら“今から2時間外出するから、その間に入っとけ”とか言われない限り入れない。

 口では“いつでも入ってえぇねんで”とか言っているが、それらの言葉が信用に値しないというのは経験上熟知している。

 素面の時と酔った時とでは言っている事がコロッコロ変わる上、素面でも日によって主張が変わるので、それこそ1日中顔色を伺いながら生活しなければならない。

 可笑しな事は、俺と弟は親父の事を“オッサン”と呼んでいるのだが、弟がいくら“オッサン”と連呼しても特に何にも無いと言うのに、俺の場合にだけ会話の中に3回以上“オッサン”を入れると結構な勢いでキレてくる。

 警察官がよく言う「なんやその口の利き方は!」と同じテンションだ。

 あまりにも格差があるが、それもこれも就職が決まるまで……と奮起してみたところで、まぁー採用されない!

 受けた面接はどれ位だろう?

 そこで、顔色を伺う事が得意な俺が、面接官の顔色を伺った結果を言いたいと思う。

 面接を受けに来た人物に興味をなくす瞬間というのは、案外分かるものだ。

 1番あからさまだったのは販売員での面接官。

 面接は本社で行われるので朝から電車に乗り、交通費を支払って向かった場所。早めに行き過ぎたのでカフェに入って時間を潰し、イザ向かった面接。

 「始めまして、面接に来ました木場と申します。採用担当のー……」

 「あ、はい。少々お待ちください!」

 小走りでやってきた採用担当者はニコニコと爽やかそうな男性で、今から面接をするぞ!という気合の入ったノートとボールペンを持ってきていた。

 面接する為の部屋に通され、履歴書を手渡し……。

 パスン。

 ノート、横に放置。

 パタン。

 ボールペンから完全に手を離した。

 はい、ここですね。この後どれだけ履歴書を眺められても、あー、駄目だったかぁ。です。それでもなんとか面接と言う形を取らなければならないと感じたのだろう採用担当者は、だいたいの所では最後に言われた、

 「何か質問はありますか?」

 を初っ端から聞いてきたのでした。

 流石に、不採用ですよね?等とは言えず、

 「バイトからでも昇進可能と求人で見たのですが、パートとか社員になれると言う事でしょうか?」

 ガッツリといやらしい話題ですよ。

 「かなり難しいです。近畿全体でバイトからの社員は1人しかいません」

 そうなのかー……。

 「あぁ、そうなんですね……」

 「はい……」

 間。

 面接でこんな無音になる事がある?って位の無音っぷりです。

 驚くべきは、この後更に3回「質問はありますか?」と聞かれたのでした。

 次に印象的だったのは雑貨店での面接です。

 「面接に来ました木場と申します。採用担当様はいらっしゃいますか?」

 「あ、アチラです」

 と言った本人が採用担当者でした。

 お前かーい。なんて事は言えないので我慢です。

 面接の為の小部屋に通され、履歴書を手渡し、面接スタート。

 「えっと、業務としては案内とレジ。接客になりーます」

 「あ、はい」

 それは求人を見て把握済みですとも。

 「でー……力仕事です」

 力仕事!?

 接客とレジ何処行った!?

 「えっと、力仕事」

 「力仕事、大丈夫ですか?」

 「あー……はい。大丈夫、です……多分……」

 スーーー。

 細く息を吐く音。

 はい、ここです!

 実は店舗の裏手に倉庫があり、恐らくは倉庫からの品出し要員を求めていたのだと思います。

 それならそうと求人広告に、力仕事です!力自慢大募集☆とでも書いてくれたら良いのに……。

 最後にインテリア雑貨店。

 店舗での面接だったので面接時間5分前にお店に行き、レジ係りの人に、

 「面接を受けに来たー……」

 「あ、はい。聞いてます。少し待ってください」

 少し待ってから現れた採用担当の方に案内され、狭い通路に椅子を置いただけの場所で面接スタート。

 色々と質問され、それに答えると、採用担当者はメモをとり、真剣に話を聞いてくれていました。

 ここは良いかも!

 と思った矢先での事……。

 「では、短所を教えてください」

 「少し集中し過ぎてしまい、時間を忘れる事もありますが、その分高い集中力を維持させる事が出来ると思います」

 「はい、分かりました……」

 スッ。

 メモ帳お膝の上。

 はい、ここです!

 接客業でのこの短所は致命的のようです。

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