77片
少し前の話。
買い物途中のスーパーの中、どういう経緯でそう思ったのか、お菓子コーナーでうす塩ポテチを選んでいた俺に向かって毛むくじゃらが結構な声量で言った。
「夢は叶うから夢って言うんやで!」
なにかの歌詞?と思う程の臭さを放つセリフに、これは俺につき付けられた何かの挑戦状なのかも知れないと思った。
俺は、そんな綺麗事が世の中に存在しない事を知っている。
例えば警察官になりたい。と思った子供が物凄い人数いたとして、全員が警察官を夢見て努力をしようとも、実際に警察官になれるのはその時に募集されていた人数分だけ。警察官になれなかった大多数の事を放っておいて、それでも「夢は叶う」とか言う薄っぺらさよ。
「叶わんから夢って言うねん」
さぁ、脳みそフル回転させて討論をしよう。
「えー。夢ないなぁ」
毛むくじゃらはそう言いながらチョコ菓子を選び始めた。
うん……。
終わり!?
結構な大声でくさいセリフを言っておきながら、もう良いのか!?いやいや、待ってくれ。毛むくじゃらが良くても、俺は良くない!
「んで、なに?夢がどーしたん?」
「夢は叶うから夢って言うんやで」
それはさっき聞いた。
あれ?これってもしかして将来の夢とかそういう志し的な意味じゃなくて、夢って言葉自体の意味を言ってるのか?
「夢は夢やから夢。叶わんから夢」
厳選したうす塩ポテチを買い物カゴの中に入れながら、俺は懇親の説明をしてみたのだが、
「ん?」
見事に毛むくじゃらには通じなかった。
だからまた少し考える。そうしている間に買い物カゴの中にチョコ菓子を入れた毛むくじゃら。
「出来そうな事は夢って言わんやん?じゃあ夢って言うのは初めから自分では出来ん事って諦めてる言葉ちゃう?んで、出来そうにもないけどやりたい事って夢とは言わんと目標って言うやん」
今度は通じるだろうか?と顔を覗き込んで見ると、少しだけポカンとした表情をしている。そして言うのだ、
「夢ないなぁ」
と。
それもさっき聞いたわ!




