66片
毛むくじゃらは一時期、坊主頭だった。
今は何事もなく伸びているのだが、坊主頭にすると色々楽だったらしく、時折独り言のように、
「また坊主にしよっかなぁ」
とか言ってくる。
何故俺に伺いをたててくるんだ?やりたいならしたら良いじゃないか。
普通ならばそう思うのだろうし、好きにしたら?くらいは言うのだろう。
しかし、俺は毛むくじゃらの独り言に対して全力をもって拒否する。
「絶対アカン。似合ってへんし、変やし!」
実際似合ってはいなかった。
毛むくじゃらの目付きは悪くて人相が怖い。その上言葉使いも少々荒いのだ。そこへスキンヘッド。更にグラサンとくれば、物凄くガラが悪くなってしまう。
そんな相手から、
「あぁ?」「お前なぁ」「えぇ加減にしとけよ」
などと言われてしまうと恐ろしい事この上ない。
本人曰く、怒ってるわけではなくて注意。らしいのだが、注意するだけなら声を低くする必要なんてないし、言葉使いを荒くする必要だってない。
「怒ってへんねやったら、10秒に1回コミカルな動きして」
当時は注意を受けるたびに恐ろしかったので、思い切ってそう提案してみた。
声と表情が怖くても、何処か1箇所だけでも“怒っていない”と感じられる部分があれば必要以上に怖がらなくて済む。
我ながらいい提案だ。
そう自画自賛した所で、
「注意されんようにするって考えはないんや?」
呆れた風に小首を傾げる、というコミカルな動きで注意を受けてしまった。