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ソラモヨウ  作者: SIN
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45面

 酔うまで飲んでみようと思った。

 今までにも何度か「酔ってみよう」と試した事はあったが、それは胃腸に負担をかけないようにする為にお酒と同等の量の水分補給をしながらだった。

 なので、今回は一気飲みする事と水分補給をしない事を頭にいれ、更に、胃の粘膜が剥がれ落ちるキューっとした熱さを感じても吐かない事と決めて挑んでみた。

 何故そうしようと思ったのか。

 それは少し前、にごり酒1杯と日本酒1杯、赤ワイン2杯という自分とっては大した量ではない筈のアルコールを摂取してから数時間後の事。親父からの差し入れのお刺身を食べた直後に起きた激しい吐き気と頭痛が原因だ。

 自覚出来るほど酔った経験がこれまでになく、二日酔いも経験がした事がなかったので、もしかしたらこの吐き気と頭痛は酔いから来るものではないか?と思ったのだ。

 しかし、アレルギーのある魚を食べた直後と言うのが気に掛かる。アルコールを摂取してから数時間が経っていた事も。

 だったら、もう1度沢山アルコールを摂取してみよう。

 という事で、大きめのマグカップに並々と自家製梅酒を注ぎ、グイッと飲んだ。

 本当ならば同じお酒を同じだけ、同じようにして飲むのが良いのだろうが、にごり酒がなかったので仕方がない。

 梅酒を飲み終えると、胃腸の調子が良くなかったせいなのか少しばかり胃に不快感が出た。

 それを無視し、軽く洗ったマグカップに並々と赤ワインを注いでグイーッと飲み、1回目のトイレに立つ。

 特にフラフラする訳でもなく真っ直ぐに歩けたのだが、自室に戻ってマグカップに2杯目の赤ワインを注いで1口飲んだ時、異変を感じた。

 アルコールが、不味く感じるのだ。

 安い赤ワインだからだろうか?と缶チューハイを飲んでみても不味いし、自家製のコーヒー酒でも、梅酒でも変わらず、身震いするほど不味く感じた。

 それでも無理してお酒を飲んでいると、次の症状が出た。

 胃の粘膜が爛れているような熱さを除いて、もう1つ。

 全く暑さを感じない。胃の熱さではなくて、気温的な暑さ。

 室温は32度を軽く超えていて、湿度も50%超えとかなり高かったのだが、扇風機の風だけで涼しく感じるのだ。その癖汗はやたらとでる。

 汗の気化熱で涼しいのだろう。と、こんな事を考える余裕があるのだから酔ってはいないのだろう。

 震えながらアルコールを更に飲み進めていくと、やっと頭がフンワリとし始め、普段では考えられない行動をするようになった。

 それは、噛む事。

 自分の親指を噛んでいるのだ。

 俺は酔うと噛み癖が出るのか……と思いながら歩いてみるが、至って普通に真っ直ぐ歩ける。

 親指の付け根を噛むという行動は、酔っているのではなくて不味さに絶えるための行動なのだろうか?

 そう思って麦茶を飲んでみれば、酷く美味しい。

 俺は酔う前にアルコールを拒絶するようだ。

 なら、酔うにはどうすれば良いのか。

 自家製の梅酒はロックでマグカップに並々と注いだ。アルコール度数35%のホワイトリカーを使用し、確か梅の実は1キロ。氷砂糖は300グラムほどだっただろうか?なので少なくとも自家製の梅酒のアルコール度数は25%ある計算になる。

 途中でアルコールの味に飽きてしまい拒絶反応が出るのなら、飽きる前に必要なアルコールを摂取しなければならない。

 そうなると、25度以上のアルコールをマグカップに2杯ほど一気飲みすれば、もしかしたら酔えるのかも知れない。

 しかし、ここでも難関が1つ。

 俺はアルコール度数が高過ぎると、喉がやられて痛みが出る。

 だからと言ってゆっくり飲めばアルコールの味に飽きて身震いが始まり、時間をかければその分トイレに立つ回数も増える。トイレで出してしまうと少なからず酔いは覚めてしまうのでやり直しになってしまうが、アルコールに飽きた味覚は元には戻らない。

 だったらコーヒー酒のように味がまろやかで喉に不安をかけないものなら……甘過ぎて1杯で限界が来るし、牛乳で割るので結局トイレが近くなる。なら原液で?いや、原液は普通に不味いし喉にくる。

 ワインは15度しかない上に、他のアルコールよりも早めに飽きが来るし、日本酒よりもアルコール度数の高い麦焼酎は味そのものが苦手だ。それでも25%程度なのだから自家製の梅酒と変わらない。

 ガジガジと親指を噛みながら、結論が出た。

 今回はいつもよりも多くのアルコールを摂取したが、切欠となった吐き気や頭痛は出なかったので、以前に出た吐き気と頭痛はお刺身によるアレルギー症状だった可能性が高い事と、もう1つ。

 お酒は美味しく飲もう。

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