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ソラモヨウ  作者: SIN
44/88

44流

 日曜日の朝、毛むくじゃらが洗車に行き、俺は洗濯カゴの中が一杯だったので洗濯機に放り込んでスイッチを押した。

 何の気なしにしたこの行為が、実はとんでもない事だったと知ったのは、脱水が終わり、干そうとした時だった……。

 毛むくじゃらの作業着の肩部分の小さなポケットに、1本のボールペンが入ったままになっていたのだ。

 そして漏れているインク。

 慌ててペンを取り出した俺の手にもベッタリとインクが付いた。

 ネットで調べるとインク汚れには、下に布を敷いて、除光液かエタノールで汚れの後ろから歯ブラシでトントンとすれば良い。みたいな事が書かれていたので早速消毒液で試してみた。

 汚れは確かに少しずつ下に置いた布に移っていった。本当に少しずつ。

 しかし、インクは作業着の広範囲にベットリとついているので、綺麗にしようとしたら日が暮れる。

 どうしよう?もう1回洗濯してみよう!

 こうして2回目の洗濯。

 ピーピーピー。

 洗濯が終わった。

 作業着を祈るような気持ちで取り出してみると、若干インク汚れが薄くなった気もするが、大して変わらない。

 何で作業着白やねん!

 とか心の中で悪態を吐いてみるが、インク汚れはどうしようもない。無駄と分かりつつ石鹸などで揉み洗いをしても俺の手に付いたインクが落ちただけで、肝心の作業着からは落ちてくれない。

 どうしよう、怒られる……でも黙ったままだと余計に怒られる……怖いな。どうしよう?

 落ち着かないまま時間を過ごし、そして終に毛むくじゃらが帰ってきた。

 「おぅ」

 両手に洗車用具を持っていた毛むくじゃらは、声をかけて来るとそのまま自室に戻ろうとしたから、そこを呼び止め、

 「あー……作業着のポケットにペン、入ったままで、それで作業着結構、再起不能な感じで、で、2回洗濯したけど、アカンっぽい……」

 さぁ怒ってくれ!覚悟は出来ている!

 そう心の中で身構えていた俺だが、毛むくじゃらは「あー」「マジかぁ」とか相槌を入れながら話を聞いていて、話し終えた後、

 「OK」

 とだけ言って自室に行ってしまった。

 あれ?それだけ?と拍子抜けしてしまった俺だったが、それだけではなかった。

 その後買い物に出かけた毛むくじゃらは、

 「手間かけさせたから」

 とか言って缶チューハイを買ってくれたのだった。

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