43本
バイト先の先輩は色んな事を尋ねてくるので、誰よりも詳しく今の俺の事を知っている。
「肋骨の調子は?」「喘息は?」
爽やかな笑顔ではなくて、穏やかな表情で尋ねてくるから答えやすいと言うのか、親しみやすいと言うのか……嫌な感じがない。
「相変わらずです」
体の調子は、酷くなっていないが良くもなっていない。安静にしていても痛い時があれば、捻っても伸びても痛まない時もある。
「もう1回ちゃんと病院行ったら?」
先輩はいつも俺に病院を進めてくるのだが、病院に行って色んな検査を受けて原因不明だった事も知っている。だから、
「また原因不明って言われるだけですよ」
と言えば、この話題は終わっていた。
しかし、この日は違った。
「もー。人生終わらせた方が早いんちゃう?」
と、冗談っぽく言ってきたのだ。
人生を終わらせる。そうした方が手っ取り早い気は、ズットしていた。
「終わらせたいんですけどね」
こんな風に言ってしまえたのは、先輩の雰囲気のせいだ。いつも冗談を言っているようで、だけど人の事を考えている少し年上の男性。
その性格が災いして全身に蕁麻疹を出す程のストレスを抱え込み、已む無く仕事を辞めてここでバイトを始めた癖に、まだ人の事を考えている。
「アカーン!生きるんじゃぁ!」
ビックリした。
カランコローン。
あ、お客さんが来た。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ」
今日も相変わらず平和だ。