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ソラモヨウ  作者: SIN
39/88

39片

 俺は今熱帯魚をオスとメスの2匹飼っている。

 名前は、オスがテンで、メスがサンゴ。

 お店で見たテンは濃い青色をしていて、一目惚れをしてしまって購入した。もちろんただの衝動買いと言う訳ではなくて、数日前から水槽の準備をしていたので計画的。

 ただ、始めはトラディショナルベタではなく、クラウンテールかショーベタを買おうとは思っていた訳だが。

 こうして手にしたテンを連れて帰り、既に準備していた水槽へ袋ごと入れて水温合わせから始めたのだが……一目で心を奪われた濃い青色が、透け感のある水色になってしまっていた。

 詳しい原因は分からないが、恐らくストレスによるもの。

 元気良く泳いではいたがストレスで色が抜けてしまった事から、俺はストレス性胃腸薬の名前から、元気になるようにとの願をかけて“テン”と名付けたのだった。

 メスを購入する事は始めから決めてはいたのだが、メス用に用意していた水槽をミナミヌマエビに使用してしまったので、メスを飼う前に水槽から揃えなければならなくなってしまい、結局買いに行ったのはテンを迎えて少し経ってから。

 メスのサンゴを購入した話は「ソラモヨウ 36片」でしているので割愛。

 始めは小さくて茶色だったサンゴは日に日に青みを増して、濃い青色の立派なレディーに成長し、そして一気に茶色に戻ってしまった。

 クッキリと胴体に現れた横縞と、一切休憩もしないで泳ぎ続ける様子は、病気を疑うレベルである。

 同じ場所を左右に激しく行き来する原因を調べてみても詳しくは分からず、水をかえたり、温度を見たり、落ち着ける場所を作る為に隙間を作ったりと思いつく限りの事はしたが現状変わらず。左右に激しく行き来したままで、見る限り眠っている様子もない。

 明るいのが駄目なのでは?と暗くしてみても休んでいる様子もない。そんなサンゴの水槽の上に置いているテンの水槽の中では、明るくともゆったりと休んでいるテンがいる。

 数日そんな状態が続き、俺は遊びに来ていた毛むくじゃらにサンゴの様子について相談してみたのだが、

 「誰かさんにそっくりやん」

 と、笑うばかり。

 毛むくじゃら曰く、出来る限りの事をしたのなら、後は気にしても仕方がない。落ち着きのない性格って事なのだろう。

 確かにそうかも知れないが、何日も不眠不休なのなら心配に思うのが当たり前だ。

 「こらサンゴ!早く寝ぇ!俺は怒ってるねんで!」

 思わずそう言った俺に対し、毛むくじゃらはニヤリと笑いながら、

 「巨大なブーメラン刺さってるけど、大丈夫か?」

 と。

 俺も毛むくじゃらに会う度に“早く寝ろ”と注意をされている。

 「ぐはぁ」

 しかし、夜の12時なんて俺にとっては昼間だし、毎日早朝に就寝していてもバイトの時間には間に合っているのだからどうでも良いじゃないか。と思う訳で……。

 「な?分かったやろ?それが俺の気分なんやで」

 俺は確かにサンゴと似ているのかも知れない。

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