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ソラモヨウ  作者: SIN
34/88

34片

 外耳炎が酷い時に電車に乗って日本橋へ行った毛むくじゃらは、日本橋についてから吐き気と鼻血に襲われ、救急病院に運び込まれるも治療は行われないまま帰され、苦しみに苦しんだ後、タクシーに乗って俺の家にやってきた。

 翌日、耳鼻科に行った毛むくじゃらは飲み薬と塗り薬を処方された。

 その薬だが、飲み薬がもうない。

 飲み薬は2種類あって、両方炎症を抑える薬で、塗り薬は外耳炎の薬。

 虫眼鏡とライトで耳の中を見てみると、赤みは消えているがまだ腫れている感じがあり、鼻の中は、まだまだ赤く腫れ上がっている状態。しかし、自覚症状がないので、いくら「もう1回診てもらえ」と言った所で聞く耳持たず。

 耳はまだ違和感があって、塞がっている感じはあるそうだが、塗り薬はまだたっぷりとあるので、やはり耳鼻科に行くつもりはないようだ。

 あの日以降、軽い鼻血が1度出ただけで吐き気も胃痛も出ていないようなので、後は外耳炎が良くなる事を祈るばかり……そう思っていた。

 しかし、毛むくじゃらはいとも簡単に吐き気に襲われたのだ。

 切欠はちょっとした言葉。

 「電車大丈夫?」

 毛むくじゃらが電車を降りて吐き気に襲われたのはお昼の2時で、俺の家に来たのが早朝の4時か5時。それまで延々と吐き気に苦しみ続けるという壮絶な経験から、電車がトラウマになったのではないか?と思ったのだ。

 「大丈夫やろ」

 軽く答える毛むくじゃらに、

 「電車思い浮かべてみて。外装ちゃうで?内装やで」

 と、言ってみた。

 少し視線を上に向け、表情を強張らせたまま無言。

 「なんか、乗り物酔いしてるみたいになってきた……」

 電車が大丈夫なのかを見るために、駅まで行かなくて良かった。

 「精神的な所にダメージがいってもたんやな……。なぁ、新しいカメラ欲しいねんけど、やっぱり一眼レフがえぇと思う?」

 とりあえず俺は電車から気が紛れるような話を振った。

 「……え?」

 気分悪そうな表情をしつつもこっちを向いた毛むくじゃらに、

 「モニターだけで楽しむ分には300万画素くらいでえぇらしいんやけど、やっぱり拡大とか、加工したら荒くなるから、もうちょっと画素数多いのが良いなーって。で、今写真撮る時、毛むくじゃらから買ったタブレット使ってるんやけど、あれって画素数いくら?」

 畳み掛け。

 「えーっと……いくらやったかなぁ。でも、そんな悪いもんちゃうで?」

 と答えてから、もう1度いくらやったっけ?と考え込む毛むくじゃらは、普段通りに戻っている。そこを更に、

 「やけど、今ので撮った写真拡大したらドットやで?そうなるとやっぱり一眼レフかなって思って」

 畳み掛け。

 「そんなえぇもんいらんやろ?今スマホでも結構えぇカメラ付いてるんやで?そうや、スマホ買ったら?キャリア契約せんでもカメラ使えるし」

 確かに、スマホならタブレットを構えるよりも手軽に写真が撮れそうだが……。

 「想像してみて。めっちゃ良い景色があってやで?ローアングルから撮りたいとするで?携帯構えてしゃがみ込んで撮ってたら変やん?やけど一眼レフやったら変じゃないやん」

 寧ろ格好良くないか?

 「逆に想像してみ?携帯でしゃがんで撮ってる人見て、格好悪ぅーって思うか?」

 あー……撮りたい景色があるんやなーって思うだけだわ。

 「とりあえず、今のでえぇ写真撮れるようになってからもう1回相談するわ」

 そう言って話を終わらせたのだが、電車の話をそのまま終わらせても良かったのかは分からない。

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