32片
俺と毛むくじゃらは近くのホームセンターに向かっていた。
お目当てはペットコーナー。ではなく、母の日のカーネーション。
ホームセンターの植物コーナーにはズラリとカーネーションが並び、1輪から鉢植えまで種類も豊富だった。
「どれがえぇかなぁ」
そう呟く毛むくじゃらは鉢植えの方しか見ていない。
「お袋さん紫好きやし、これは?蕾も多いし、咲いてる花も多いから長く楽しめると思う」
そう店員さんみたいな事を言いながら鉢植えのカーネーションを勧めてみると、
「移動させる事も考えたら、持つ所あった方がえぇと思う」
と、拒否してきた。
なので持ち手のある鉢植えのカーネーションを見てみるが、紫色の鉢は1つもなく、白とか黄色とか、明るい色ばかりで、赤やピンクがあっても蕾ばかりだったり、逆に少し萎れていたり。
良いのがないな。とは流石に言えず、
「店の中もちょっと見てみよか」
そう言って2人で店内の、ペットコーナーへ向かった。もちろん、見に行くだけだ。すると、成猫になって随分と割引になっていた猫のゲージに、新しい家族が出来ましたとの張り紙が貼られていた。
ホームセンターに来る度に見ていた猫だったので、少し寂しいのと、嬉しいのと。
10分程癒されてから植物コーナーに戻り、もう1度カーネーションを選んでみる事にして、大きくグルリと植物コーナーを1週してみれば、カーネーションの鉢植えを置いている棚がもう1箇所あった。
そこには手持ちの鉢植えもあったのだが、そこにも紫色はない。しかし、咲いている花と蕾のバランスが良くて、咲いている花が萎れていない赤色のカーネーションの鉢植えがあるではないか!
「これ、えぇと思う!」
オススメの鉢を持って差し出してみれば、
「それにしよ!」
と即決。
母の日当日は毛むくじゃらが仕事なので、このまま渡す事にした俺達はそのまま毛むくじゃらの実家に行き、1日早いけど。と、カーネーションを手渡した。
お袋さんは物凄く喜んでくれて、窓際の棚の上に鉢を置いて飾ってくれたのだった。