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ソラモヨウ  作者: SIN
3/88

3本

 俺はかなりの人見知りである。

 コミュ症でもあり、人間不信でもあって、恋愛恐怖症でもある。

 単純に、対人恐怖症なのだと思う。

 バイト先にはマスターと先輩がいるのだが、こんな感じなので慣れるにはそれはそれはもう、とんでもなく時間がかかってしまった。

 「今日から働いてもらう木場君」

 そう言って紹介してくれたマスター。

 「よろしくお願いします」

 そう言いながら頭を下げて挨拶をした俺。

 「よろしくー」

 そう笑顔の先輩。

 優しそうな人で良かったと第一印象で思ったのだが、人見知り。好印象だからと言って喋られるようになる訳もない。

 お客さんが入ってくれば至って普通に声を出す事は出来る。

 「いらっしゃいませ」

 「ありがとうございました」

 以前バイトしていた所が定職屋だったので、基本的な声かけも出来ていたと思う。

 しかし、急に声が出なくなる時間が存在した。

 それは、休憩時間。

 カウンター席の端はバイトが休憩する席となっているので2人並んで座る訳だが、友達同士ならば気にならないけど、慣れていない人間となると近過ぎる距離感なのだ。

 何か話した方が良いのだろうか?

 何を喋れと?

 仕事内容で分からない所を聞くとか?

 そんなもんマスターに聞いた方が良いって言われるだけだ!

 珈琲を飲みながらチラリと先輩を見上げてガッツリと合った視線に、思わずブハッと噴出してしまった。

 「どした?」

 ニコニコしている先輩は、物凄く自然に珈琲が飛び散ったカウンターを拭いている。

 「すいません……」

 「なぁなぁ、聞きたいんやけどな」

 急に何を!?

 え?何を言われるんだ!?

 仕事態度が可笑しかったとか?やる気なさそうに見えてるとか?目付きが悪いとか?

 「なんですか?」

 物凄くドキドキしながら先輩の質問を待っていると、少し間を置かれてしまった。

 なんですか?は失礼だった!?なんでしょうか?の方が良かったとか?それとも質問内容を察しなければならなかったとか?

 あれだ、愛想が悪いとか声が小さいとか、きっとそんな感じのだ。

 しかし、そうだと分かった所で手遅れだ……こんなに沈黙の時間が延びてしまったら話し出す事すら難しい。

 技とらしく「あぁ、分かったー」とか言えば良いのか?そんな呑気な台詞が発声出来るならとっくにしてるわ!

 くそ……珈琲を噴出してしまったばっかりに……そうだ!カウンターを拭いて汚れた台拭きを洗いに一旦洗い場に逃げよう!

 椅子から立ち上がり、先輩の横に置かれている台拭きを手にとった所で、

 「木場……?」

 と、名前を呼ばれた。

 「はい」

 ただ呼ばれた訳ではなくて、続きを期待しているような、そんな感じ。

 「木場……木場……?」

 確実に下の名前を聞かれている。しかし、人見知り。

 自分の名前を言う事すら恥ずかしい。寧ろ言いたくない。

 「あ、はい……木場です」

 「ちゃうやん。名前……下の」

 ハッキリと聞かれてしもたぁー!

 言いたくない、恥ずかしい。言いたくない、恥ずかしい。

 「えっと……SINッテイイマス」

 カチコチに緊張して妙な片言になってしまった。

 「へぇー。なぁ木場ちゃん、ID交換しよっか」

 名前を聞いておきながら、苗字呼びだとぉーう!しかもサラッとID交換を促してくるとは!

 ふっ……しかし残念だったな……。

 「携帯持ってないので」

 タブレットなら持ってはいるが、ライン登録はしてないから出来ない。

 「そんなナンパ断るみたいな事言わんでもえぇやん」

 やっぱり携帯を持っていないと信じてもらえなかったらしい。

 あ、そうだ。

 “ツイッターのIDだったら交換できますよ”

 と、頭の中で何度も復唱してみるが声には出せず、あまりの居心地の悪さに台拭きを洗いに洗い場へと逃げた。

 逃げたと言っても、カウンター席から丸見えだ。

 こうしてその日の休憩時間は終わったのだが、翌日の休憩時間、先輩は何故か急にフレンドリーになっていて、好きな音楽とか、好きだった教科とかを聞かれ、そしてまたID交換の話に。

 こうして俺と先輩はSNS上でフレンドになったのだった。

 隣同士で喋っていると緊張してしまうが、文章だけなら少しは気分が楽になり、徐々に先輩に対しての緊張もほぐれ、終には休憩時間を楽しめるようになったのでしたとさ。

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