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ソラモヨウ  作者: SIN
29/88

29片

 俺と毛むくじゃらの休みは、ことごとく合わない。

 それでも桜の咲いている時期に毛むくじゃらプレゼン、京都への旅!を、開催しようと思っていた。

 しかし、休みが合わない事にはどうしようもなく、急遽予定は変更になった。

 毛むくじゃらが休みの日、俺はバイトをちょっとばかし早めに帰らせてもらったのだ。

 とは言っても午後2時なので急がなければならない。

 バイトが終わった事をメールで連絡してから駅に向かうと、既に切符購入済みの毛むくじゃらがいて、丁度良いタイミングでやって来た電車に乗り込んだ。

 目的の駅に着き、まず始めに向かったのはディスカウントショップだったりする。

 特に何も買わずに出て、その後は葉桜を眺めながらの川沿い散歩。綺麗に咲いている八重桜の周りは写真を撮っている人で大賑わいだったので、便乗して1枚。

 他愛ない話をしながら歩き、遠くに見える立派な城を眺める。

 ここは、大阪城。

 何故京都から大阪城になったのかを問うと、幾つか理由があったらしく、得意げに言ってくれた。

 「時間ないし、電車酔うやろ?そんで、大阪城来たいって言うてたし」

 と。

 確かに、京都に行くのなら朝から出発しておきたい。それに、前回京都に行った時は枚方公園前で完全に酔ってしまい、終盤は項垂れたまま動けずにいた。そして、俺は確かに大阪城が好きだ!毎年桜の時期が来る度に行こうと言っていたほど!

 秀吉の石垣が見たい!

 そう息巻いて、かなり久しぶりに大阪城天守閣を目指して歩いた。途中にある“見所”にも足を運んで写真も撮ろうとしたのだが、平日だと言うのに物凄い人で、他者を写さないように写真を撮るのは無理で、已む無く写真撮影を断念した箇所も多かった。

 天守閣前のチケット売り場前の長蛇の列を尻目に、俺は周囲を歩き回る。

 「どした?」

 どうしたもこうしたもない。

 何処に行けば秀吉の石垣を見られるのか分からないのだ。

 「石垣……」

 キョロキョロしながら答えるが、何処にもそれらしいものが見当たらず、諦めて帰る事になった。

 しばらく進んだ所では、ご当地キャラクターの着ぐるみとの記念撮影会?が行われていて、更にそこには、豊臣石垣の公開施設にご寄附を。的な事が書かれた看板が!

 どうやら、石垣を見学出来る施設を作っている最中のようなのだ。つまり、現在は何処に行っても石垣は見られないと言う事!

 なんてこったい……。

 「寄付したら名前載せてくれるみたいやで」

 えぇ!?

 大阪城に、名前が!?

 「どーやんの?」

 「名前は10万以上やな……1万以上で記念メダル」

 名前を残すのは少しばかり現実的な額ではなかったが、1万円ならなんとかやれば算出できるかも知れない!

 で、肝心の寄付方法は?

 看板を見ながらポツリポツリと情報を呟く毛むくじゃらだが、寄付方法については良く分からない。

 詳しい事は帰ってから調べよう。と、駅に向かって歩いて行くと、昔は服屋だったはずの場所がUFOキャッチャーやらガチャが置かれているゲームセンターになっていた。

 「ちょっと見てく?」

 少しばかりの散財をしてゲームセンターを出ると、真正面にはクレープ屋があって、苺フェアかなにかを開催しており、苺のクレープ4種類が290円という破格の値段で売られていた。

 「苺カスタードチョコにしよ。SINはどれにする?」

 完全に食べる気満々の毛むくじゃらではあるが、ここで俺が「1人で食べぇや」とか言えば「じゃあえぇわ」と食べないのが毛むくじゃら流だ。

 しかし、甘くなさそうなツナサラダクレープは290円ではなく、ちょっとばかしお高い。

 「一緒のにしよっかな」

 列に並んで注文をすると、店員さんが100円プラスでドリンク付ですよ。と、親切に教えてくれた。しかも目の悪い俺にも優しく、ドリンクを指差しながら発音してくれた。

 甘さ控えめなクリームに、甘酸っぱい苺のクレープは苦めの珈琲との相性も良く、甘い物が苦手な俺にでも美味しく食べる事が出来た。

 「また来よな」

 「うん。来よな」

 最後は綺麗に意見の合った俺達ではあるが、大阪城にまた来たい。との意味を込めた俺に対し、毛むくじゃらが来ようと言ったのはクレープ屋の事なんだろうなぁ。

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