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ソラモヨウ  作者: SIN
26/88

26流

 日曜日の朝。

 1代目が毛むくじゃらに怒られた。

 単なる注意とかではなく、結構真剣に。

 俯いている1代目は、言い返す事もせずにジッとしているが勢いにビックリしているのか、それとも怖いのか少しだけ泣きそうだ。

 「こーいうのが1番嫌いやねん!」

 との捨て台詞と共に自室に行った毛むくじゃらは、かなり勢い良く部屋のドアを閉めると、何かを投げ散らかしたのだろう、ガシャンと1回音が聞こえた。

 事の発端は単なるおふざけの延長線で、朝食を用意していた毛むくじゃらに1代目が体当たりしただけ。

 普段ならは「ゴラァ!悪さすんな!」と一括されるだけで終わっただろう。しかし、1代目がちょっかいを出したのは朝食用の目玉焼き作成中、だったのだ。

 それだけならばまだ「危ないやろ!」との注意だけで済んだのだろうが……毛むくじゃらは体当たりされる直前、出来上がった目玉焼きを皿に盛る為、回れ右したのだ。

 もちろんその手には熱々のフライパン。

 危うくフライパンが1代目に当たりそうになっていたのだ。

 俯いたままの1代目。

 怒られた原因が自分にある上、自分の事を心配しての説教なのだから、調子に乗ってしまった事を酷く悔やんでいるのだろう。

 自分を否定するのはシンドイ。

 しかし、ここで俺が下手に口を出すのは違う気がした。だからと言ってこのままジッとしているのも違う気がして、俺は毛むくじゃらが途中まで用意した朝食の続きを作り始めた。

 その間、1代目はソファーに移動して俯いたまま無言。毛むくじゃらの部屋からも物音は聞こえてこない。

 チン♪

 食パンの焼ける音がして、たっぷりとバターを塗って2人分の朝食が出来上がった。

 トースターには2枚しか食パンが入らないのだ。なのでもう1枚食パンをトースターに入れてから毛むくじゃらを呼びに部屋に向かった。

 「出来たで」

 無言で部屋から出てきた毛むくじゃらがリビングに向かい、ソファーに座っている1代目の方に向かって歩く。

 「火傷してへんか?」

 「はい……」

 「次からあんなんしたらアカンで」

 「……はい」

 チン♪

 3枚目の食パンが焼けて、バターを塗って、

 「いただきます。しよ」

 そう声をかける。

 「はい、いただきます」

 「いただきます」

 「いただきます」

 こうしていつも通りの朝を迎える事が出来たので、俺は少し1代目を元気付けようと、とっておきの情報を教える事にした。

 「毛むくじゃらが怒る時って、絶対“こーいうのが1番嫌い”って言うねんで」

 と。

 後日、毛むくじゃらからちょっとした苦情が届いた。

 「怒ってても“こーいうのが1番嫌い”意識してもて笑ってまうやん!」

 と。そして1代目も我慢が出来なくなるらしく、怒られていてもその部分で必ず吹き出してしまうのだとか。

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