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ソラモヨウ  作者: SIN
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25本

 休憩中、先輩が携帯を取り出して眺め始めた。

 だからメールとかのチェックをしているのだろうと大人しく珈琲を飲んでいると、隣から小さな溜息が聞こえてきた。

 何かあったのだろうか?

 訪ねても良いのだろうか?

 それとなく、軽く聞いてみようかな。

 「えーっと……どうしたんですか?」

 慣れてきたとは言っても、人見知り。

 そう簡単に柔軟な台詞がポンポン出てくる訳もなく、単なる直球しか投げられません。

 「んー。ネットワークカメラ家に設置してみたんやけど、切れて見れん」

 切れるってなにが?

 「電源?」

 「設定」

 「回線?」

 「不安定なんかも」

 あぁ……成る程。

 それから数日後、俺は酷い頭痛に襲われてバイトを早退させてもらった。偏頭痛だろうとは思ったが、時期的に風邪と言う事も考えられたので少々思い切って1週間の休みを貰った。

 家に帰って少し眠った所で通知音。

 タブレットを見てみると先輩が「やっとカメラにアクセス出来るようになった」と発言していた。そして「何が映るのか楽しみ」とも。

 何が映るのだろう?

 そこから先輩からの発言はなく、頭痛もなくなった1週間後の休憩時間、俺は珈琲を飲む前に尋ねてみた。

 「カメラ、何か映りました?」

 少し考え込む素振りを見せた先輩は、何故カメラの設置に至ったのか、その経緯から話してくれた。

 先輩は1人暮らしで、ペットも飼っていないのだが、時折物の位置が変わっているのだとか。

 始めは自分の気のせいだと考えていたそうだが、消した筈の電気がついている事で一気に気味が悪くなり、外出中に部屋の中で何があったのかを見よう。と言う事でカメラを設置したそうな。

 「で、何か映りましたか?」

 カメラの前で動きがあったら録画を始める。と言う機能が付いていたらしく、帰宅後に確認すると先輩が出勤する時と帰宅した時の2種類の動画が撮れており、その外出時の画面で、先輩は電気を消し忘れていたそうな……。

 「それだけちゃうで?」

 と、先輩が俺にスマホ画面を見せてくる。映っているのは少々散らかっている先輩の部屋だ。

 「電気は消えてるみたいですけど?」

 可笑しな所を探そうと目を凝らすが、窓も閉まっているし、何か物音がしている訳でもない。

 「よぉー見てみ。押入れの前にかけてる服、揺れてるやろ」

 画像はカクカクしていて分かり辛くはあったが、言われてみれば微妙に動いている。

 「確かに……」

 窓は閉まってるから風で揺れてる訳ではない。だったら何故揺れてるんだろう?ネズミとかが揺らしている訳でもなさそうだから……これは、もしかして?

 「今日は扇風機付けっぱなしや」

 なんじゃそりゃ!

 「なんでこの時期に扇風機?」

 この時、世の中は冬である11月だ。

 「パソコン用」

 あぁ……成る程。

 こうして先輩の怪奇事件は単なる消し忘れで解決したのだった。因みに、これ以降ネットワークカメラの電源を入れた事はないらしい。

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