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やかんでお湯を沸かす為に台所に行くと、換気扇の横に人の頭部ほどの大きさの蜘蛛がいた。
数回瞬きをしてからもう1度換気扇の所を見ると、何もいない。
黒い汚れか何かがあって、それを蜘蛛と見間違えたというのなら、実に平和的であると言うのに、換気扇周りに黒い汚れはない。
ゆっくりと換気扇の下に向かい、念入りに蜘蛛を探してみるが、やっぱりそこには何もいない。
幻覚と、遊んでみよう。
俺はハエと蚊用の殺虫スプレーを手に取ると、換気扇の少し下に向かってシュっと少量噴射し、大きな蜘蛛を退治した気分だけを味わってみた。
幻覚との遊び方がこれで合っているのかどうかは別として、率直に思った事は、
「俺は何をしてるんだろう……」
だった。