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ソラモヨウ  作者: SIN
14/88

14片

 大晦日目前の12月29日の事。

 帰省するのかしないのか、全く連絡のない姉に痺れを切らした親父が弟に連絡するように言った。

 例年通り31日のお昼頃に来る筈だと思っていた俺の予想を大きく外した姉の帰省予定日は、30日の午前。

 えらいこっちゃー!

 部屋の掃除を急いで済ませ、スーパーに行ってイザと言う時の為のインスタントラーメンと缶詰め、お茶漬けのりを買った。

 こうして向かえた30日。

 31日の午前に仕込む予定だったおでんを急いで仕込んだ親父がダイニングでビールを飲みながら、味見にしては少々豪快におでんを食べ、弟は自室でゲーム。

 時は既にお昼を過ぎ、一般的には午後と呼ばれる1時頃、ようやく姉から連絡が入った。

 荷物が多いと言う事で弟が車で姉達を迎えに行き、俺はいよいよ緊張しつつ部屋着なのに余所行きっぽい小綺麗なジャージに着替えた。

 こうして姉達が来て「年末にかんぱーい」と始まる飲み会。

 途中、姉と弟と俺でお酒の追加買出しにスーパーへ。

 カゴを持つのは姉と弟。

 姉は野菜コーナーから順に回って行く中で弟はお酒コーナーへまっしぐら。一瞬どちらについて行こうか?と考えつつも特に買いたい物がないのでプラプラとスーパー内を歩いて行くと、いつもの癖なのか何なのかお酒コーナーに足が向かっていた。

 チューハイを選んでいる弟に近付いていくと、丁度新発売の文字が。

 「これ新しい味やって」

 そう言ってお勧めしてみれば、

 「じゃあコレにしよ」

 と、弟はチューハイをカゴの中に入れてお菓子コーナーを目指すから、俺も一緒になって向かってみるとそこには姉もいて、何やら人数分のチョコ菓子をカゴの中に入れていた。そんな姉の横には、ハーブが香り、ワインと良く合うクラッカー108円が。

 「コレ、美味しいで」

 手にとってオススメしてみれば、

 「えぇで」

 と、弟がカゴの中に入れた。

 そしてまた3人バラバラになってスーパー内を歩き、冷凍食品コーナーに来た時、真正面に立っている姉が、物凄い自信ありげな顔をしてこっちを見ていた。何事か?と近付いていけば、

 「アーモンドは食えるよな?」

 との事。

 「うん」

 頷いて答えると、冷蔵コーナーに向かってアーモンド入りのチーズをカゴに入れた後、更に、

 「肉やな?」

 と、から揚げまで買ってくれたのだった。

 帰宅して早速始まった2次会がお開きになったのは夜が明ける5時頃。その間ネガティブな話も、ポジティブな話も色々した訳なのだが、スーパーの中で姉が妙に自信ありげな表情をしていた理由を知る事が出来た。

 「今日スーパーの中で見失わんかったで!」

 と。

 そこから俺は毛むくじゃらと一緒に買い物に行った時に言われた事のある言葉の数々を紹介した。

 「足音がしない」

 「うん!」

 「水平移動してるみたい」

 「アハハ、分かる!」

 否定されないので、もう1つ言ってみた。

 「ゆるふわ不思議系」

 もちろん、1度も言われた事はない。それでも姉は同意するのか否か……

 「それはない」

 即答だった。

 なので、本当に言われた事のある事を言ってみると、

 「……珍獣的な不思議さ」

 「あー、うん!1回毛むくじゃら君と喋りたいわぁ」

 物凄く同意されてしまった。

 それから数日の事。

 姉が来ていた事をなんとなく毛むくじゃらに言いつつ、2次会で繰り広げられた会話を少しばかり披露してみた。

 「足音立てて歩けーって言われたわ」

 「やろな」

 「水平移動してるみたいって言われたって言うたら、笑いながら同意された」

 「あははは、やろなぁ」

 だったら、これはどうだろう?

 「ゆるふわ不思議系」

 「どこが?」

 即答だった。

 「……珍獣的な不思議さって言うたら、めっちゃ同意された」

 「へぇー、1回会って話してみたいなぁ」

 この2人が会えば、意気投合するかも知れない……と思ったお正月休みでした。

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