11流
夜の11時過ぎ。
居候日での就寝時間が迫っている中で、俺はリビングのソファーに寝転んでいた。
このまま朝まで寝てしまおうとしているのだが、横になっている俺の隣には1代目が座っているので多少狭い。
「ちゃんと布団で寝てくださいよ?」
寝かせないようにしているのだろう、時々ユサユサと体を揺らされる。
布団で眠りたいのは山々なのだが、問題が生じているのでそうにもいかない。
俺は毎回毛むくじゃらの部屋に布団を敷いて、そこで寝ているのだが、その毛むくじゃらが飲み会から帰って来ないのだ。
本人不在で部屋の中に入って良いのだろうか?
毛むくじゃらに聞けば「別に良い」と言うのだろうが、俺が落ち着かない。勝手に入っていると言う罪悪感で寝る所じゃなくなる。
でも、もし俺がソファーで寝ていたら?
折角楽しく飲んで帰ってきた毛むくじゃらの気分を台無しにしてしまうかも知れない。
だからって本人不在の部屋に上がり込んで、堂々と寝ているのはどうなんだ?
寝ずに起きとく?
起きてる方が怪しいわ!
眠くなるまではソファーでノンビリ。眠くなるや否や部屋に行って就寝。これでいこう!
こうして就寝したのは1時を少し過ぎてからなのだが、結局毛むくじゃらは帰って来なかった。
翌朝になってもベッドは空のまま。リビングに出ても誰もいないし、トイレと風呂場の電気も消えている。
何かあったのだろうか?
何処で飲み会をしていたのだろう?1代目を起こして携帯に連絡を入れてもらおうか?いやいや、子供じゃないんだし外泊位するだろ。それに、連絡がないって事は大丈夫である証拠じゃないか。
「あ、おはようございます」
1代目が起きて来たので一緒に朝食を食べていると、ガチャガチャンと鍵の空く音がした。
帰ってきた。
なんとも言えない安堵感から、俺の視線はリビングの入り口に向いて、今か今かと足音の主が登場する事を待っている。
ガチャ。
え……?
「えぇ!?」
「えぇー!?」
毛むくじゃらは、坊主頭になっていた。
何故そうなったのかを聞いても笑うだけで教えてくれないので、何か余程の事があったのだろう。
「毛がないと、頭サブイわ」
ハハハ、と笑いながら部屋に行ってしまった毛むくじゃらは、ニット帽を被ってリビングにやって来た。
部屋の中では帽子を脱げ。いつもなら毛むくじゃら本人が言いそうな事なのに。
それほどまでに頭皮が冷えるのだろうか?それとも、坊主頭を見られたくない?
俺は毛むくじゃらの正面に立つとニット帽を掴んだのだが、引っ張っても取れない。ビクともしない。
「あれ?」
一生懸命帽子を取ろうとするが、頭にくっついているんじゃないかと言う位。
「なに?」
ソッと俺の手を帽子から引き剥がした毛むくじゃらは、同じように引っ張って帽子を脱ごうとして失敗し、米神から手を入れて、脱ぐようにして帽子を取った。
そのニット帽を拝借し、坊主頭に被せて引っ張ると、短くなった髪の毛が引っかかって取れなくなった。
これは、まるで……マジックテープだ!
「急に騎馬戦始まっても余裕やな!」
「おぅ、そうやな!」
「何で急に騎馬戦!?」