第21話 楽しい学園生活 3
今日は体育の授業もある。
ボクたちは鍛錬服に着替えて鍛錬場へ向かった。
いつもお着替えを手伝ってもらっている者がほとんどだ。
だから着替えのスピードは遅い。
特に2年生から入学した者は着替えが激遅である。
ボクは更衣室でボタンをはずしながら嘆く。
「服着替えるの面倒だねぇ」
カーティスもうなずきながら言う。
「早く生活魔法で着替えられるようになるといいですねぇ」
セインはズルいので、さりげなくカーティスに手伝ってもらっている。
マキシムはクルンと1回転して、獣の姿になった。
白くて小さくてモフモフしていて可愛い。
だけど……。
「ダメだよ、マキシム。人間の姿で鍛錬しなきゃ」
ボクが窘めると、しょぼんとしたマキシムはキューンと小さな声で鳴いて元の姿に戻った。
さっきまで着ていた服は、ボタンが留められたまま足元に転がっている。
すっぽんぽんで鍛錬場へ行ったらダメだよ、マキシム。
ボクは自分の着替えを終えると、マキシムが鍛錬着を着るのを手伝った。
ちょっとだけお兄さんになった気分だ。
マキシムは獣人なので、面倒になるとすぐに獣の姿になってしまう。
それだと学園で勉強にならないからね。
ここは友人として厳しく対応しなければ。
マキシムに鍛錬着を着せ終えたボクは、彼の白い髪を撫でた。
手触りがいいんだよねぇ、マキシムの髪。
「あ、ズルい。我も撫でるっ」
「セインさまっ。そんなマキシムをペットみたいに……」
ボクがマキシムを撫でていると、なぜかセインも混ざってくるんだよねぇ。
セインを止めにきたカーティスも、マキシムを撫でている。
いつもこんなで、なんだかんだとボクとマキシム、セインとカーティスは一緒だ。
だから四人セットだと思われている。
鍛錬場を区切る壁の向こうへ行くために、急いで入り口を通り抜けたけど、ボクたちを待っていたのは怒鳴り声だ。
「そこの仲良し四人組っ! 遅いぞ!」
さっそく鍛錬場にスタンバっていた体育のマドックス先生に怒られてしまった。
マドックス先生は、褐色の肌をしたゴリマッチョな先生で、髭は濃いのにスキンヘッド、その上頬に傷もあったりして見た目からして怖い。
でもセインはそんなのお構いなしだ。
「鍛錬場が遠いんです」
セインが口を尖らせて訴える。
「鍛錬場までの道は今日も一昨日と変わらないぞ。ちゃんと時間を考えて動きなさいっ」
あーあ。変な言い訳するから、マドックス先生がもっと怒っちゃった。
「罰として、鍛錬場を五周走ってきなさいっ」
「「「「え~」」」」
ボクたちは仲良く抗議の声を上げたけど、マドックス先生の意思は変わらない。
仕方なくボクたちは走り始めた。
鍛錬場の入り口にある魔法道具で守護の魔法を解かれちゃうから、運動するとすごく疲れる。
それだけ普段は魔法で体が守られているってことらしい。
守護の魔法は護衛代わりのものだから、戻るときに魔法道具でかけなおすんだよ。
他の生徒たちは、こっちを見てクスクス笑いながら縦に跳ねている。
跳ねてるだけだからマヌケに見えるけど、キチンと意味のある鍛錬なんだって。
今日の授業は魔力コントロールの授業。
魔力と体を連動させるためのものだ。
跳ねることで足元に魔力を集中させて、コントロールしやすくなるらしい。
走るのは単純に基礎体力をつけるためだよ。
体は強いほうが魔力を扱いやすいんだって。
まれに集中力だけで魔力を扱える天才が現れるらしいけど、基本的には魔法使いも体作りが大切だ。
マドックス先生はパワータイプの魔法が使えて、剣術にも長けている、戦闘力が高いタイプらしい。
ボクにはよくわかんないけどさ。
鍛錬場を五周もしたからボクたちはへとへとだ。
マキシム以外は。
マキシムは体力のある獣人だから、少し走ったくらいじゃ疲れない。
カーティスも護衛を兼ねたお世話係だから、少ししか疲れてないみたいだ。
だからへとへとなのは、ボクとセインだけだ。
セインと同レベルなのは悔しいから、早く体力つけたいな。
「よぉーし、走り終わったな。次は跳ねて魔力コントロールの鍛錬だ。グズグズしないっ」
マドックス先生、キビシー。
ボクたちはブツブツ言いながらも跳ねてる皆のなかに混ざった。
体力の有り余っているマキシムは楽しそうに跳ねている。
カーティスも、そんなに苦しそうではない。
ボクとセインはヘロヘロだ。
あーもうっ。セインと同じレベルなのは悔しすぎるっ。
ボクはドンッと強く地面を蹴った。
「えっ? アイリスッ⁉」
マキシムの焦ったような声がする。
なんだろう?
不思議に思って前を見るとみんながいない。
なんだったら校舎も、鍛錬場を囲っている壁も見えない。
へ? なに?
そう思った瞬間、マドックス先生のボクの名を呼ぶ焦った声が響いた。




