その27
伶奈と遊んでいてばったり凛と会ってからしばらく経ち伶奈とは凛のおかげか? 結構仲良くなったと思う。だがしかし俺は土曜日になり風邪を拗らせてしまった。
「お兄ちゃんも風邪引くんだねぇ」
「俺のせいじゃない、凛のせいだ。 あいつが雨の日まで連れ出すから」
「それはお兄ちゃんがいい加減だから凛さんが連れ回すんじゃない?」
「俺がいい加減? 俺はしっかりと向き合ってるつもりだけど?」
「うん、思いっきり見当外れの方向にね!」
「はぁ? お前なんか知ってんの?」
「さぁ? どうでしょう? あ! 凛さんのせいって言うなら凛さんにお見舞いに来てもらおうか?」
「いやいや、そんな気力ないから」
「って今更何も言わなくても凛さんなら来ると思うよ?」
「え? あいつ俺が風邪引いてるの知ってんの?」
「うん、私に連絡来てたから! お兄ちゃんが具合悪そうだったって凛さんが言ってたし」
「なんで奈々に連絡が行くんだよ?」
「だって私凛さんの味方だから凛さんには私からお兄ちゃんの事筒抜けなのよ」
「俺のプライバシーってないのかよ?」
「ああ! お兄ちゃんそんな事言って私がお風呂に入ってる最中よく開けてくるじゃない!?」
「ああ、それはいつもお前のタイミングが悪いんだろ? 人が風呂入ろうと思うといつも入ってやがって……」
「お兄ちゃんが家族じゃなかったらただの変態よ!?」
「お前の全裸なんて何も興奮しないから安心しろよ」
「このスケベ野郎! そんなんだから凛さんにも失礼なのよ!?」
「なんで凛の話題になるんだよ?」
「あー、私が凛さんだったらもうとっくにお兄ちゃんとの友達の縁は切ってるんだからね!」
「それはお前の話だろ? 凛はそんな奴じゃないよ」
「げっ、急に彼氏みたいな事を言っちゃって……」
すると家のインターホンが鳴った。
「あ!噂をしたら凛さんじゃないかな」
そうして騒がしく奈々は玄関の方へドタドタと向かって行った。 まったくあいつは本当に凛贔屓だな。
しばらくしてトントンと俺の部屋をノックする音が聞こえた。
「瑛太、凛だけど入っていい?」
「その前に俺に少しくらい連絡しろよ」
するとこちらが入っていいよと言ってないのにガチャッとドアが開き凛が入ってきた。
「瑛太、具合どう? 心配したんだよ」
「その割にお前嬉しそうにしてるのはなんでだ?」
「そりゃ瑛太の看病出来るからに決まってるじゃない! これは瑛太の家知ってる私の特権なのだ!」
「そういえば伶奈も俺の家行きたいって言ってたな」
「………… それはそのうちね」
凛はバッグをゴソゴソとしだした。 何してんだ?
「はい! スポーツドリンクと栄養剤とか!」
「わざわざ買ってきたのかよ? あれ? お前それっていちいち付け替えてんの?」
「え? わかった? 瑛太って意外と私の事見ててくれたんだね」
凛は学校の時も通学バッグに花のブローチと俺がゲーセンでとった景品を付けて来ていた。 そして今もそれと同じ物をつけてきている。
「そりゃ俺のあげた方はすぐわかるしいつもそのブローチ大切そうにしてるだろ?」
「えへへ、私大切な物はいつも自分の側に置いておきたいの!」
「まぁそんなに気に入ったんならあげた甲斐があったけど」
「うん、大切にするねって言ったでしょ? 今では私の宝物だよ」
そんな事を恥ずかしげもなく満面の笑みで言われるとなんだか照れ臭い。
そして凛はこちらに来て俺の顔を両手で掴んだ。 へ? 何すんの?
すると凛は自分の額と俺の額をくっつけた。
「うーん、熱はもう下がったのかなぁ?」
「ていうかお前の方が熱いんだけど?」
「え!? あれ? 私の方が熱あるのかなぁ? あはは……」
「いきなり何すんのかと思ったら…… いつも思うけどお前ってよくそんな事平気で出来るよな?」
「こ、これはとっても仲良い人にしかやらないんだからね! あ、ほら、親友だけにするスキンシップとか?」
「何やっといて焦ってんだよ?」
「わ、私欧米式なの! 外人なら普通だよ普通!」
「なんか初耳だけど?」
「わかんないなら黙ってされてればいいの!」
「てか俺のとこ来て良かったのかよ? お前も風邪移るんじゃないの?」
「私が引っ張り回して風邪引かせちゃったんだから私がちゃんと看病してあげようと思ったんだからいいじゃん」
「お兄ちゃん、凛さん入っていい?」
すると奈々がドア越しからそう言った。
「いいよ、入れよ」
そして奈々が入ってきた。
「いつもいきなり入るくせに何遠慮してんだよ?」
「あー、お兄ちゃんったら。 もし私が入ってきてお兄ちゃんと凛さんが裸とかだったらシャレにならないじゃない」
「はぁ!?」
「な、奈々ちゃん……」
奈々がいきなりおかしな事を言うもんだから俺と凛は真っ赤になってしまった。
「あははは! 2人とも真っ赤になっちゃって本当に仲良いよねぇ」
「てか何しに来たんだよ?」
「私お昼ご飯の材料買ってくるから2人でお留守番お願いね?」
「瑛太のご両親いないの?」
「ああ、今日は2人とも仕事だから」
「凛さん良かったね! お兄ちゃんと2人きりだよ?」
「おい、奈々! 変な事言ってないでさっさと行けよ!」
「はいはーい! それじゃ楽しんでねぇ」
そうして奈々は部屋から出て行った。
奈々の発言のせいで微妙に俺と凛の間に緊張感が生まれたような気がした……
のは気のせいで凛は体温計を持ってきて俺に測るように言った。
なんだ、気にしたのは俺だけか。
「瑛太、少し汗かいてるね? 着替えとかあるよね?」
「ああ、ベッドの下に引き出しあるだろ? そこに入ってるよ」
「じゃあ洗濯しちゃうから着替えて? いつまでも汗かいたままの服だと良くないよ?」
「そうするか。 てか凛が洗濯するの?」
「当たり前でしょ? 何しに来たと思ってるのよ?」
「わかったよ。 それより俺が着替えてる間もここにいる気か?」
「あ! そうだった、ごめんごめん! 出てるから着替えたら呼んで」
そして凛は部屋から出た。 まったくどっか気が抜けてるよな。 でも少し凛が来てくれて嬉しいような気がしたのも事実だ。
「瑛太着替えた?」
ガチャッとドアが開いた。
「わっ! バカ!」
「きゃあっ!」
「いいって言うまで来るなよ!」
凛がフライングでドアを開けたので咄嗟にパンツを上げた。 凛は急いでるドアをバタンと閉めた。見えてなかったよな? いや、そう願いたい。でも声を上げたって事は……
ダメだ、なんかクラっとしてきた。着替え終わり凛を呼んだ。 今度は控えめにドアが開いた。
「え、瑛太、終わったの?」
顔が茹でタコのように真っ赤になっている凛を見て察してしまった、ダメだ、少し寝よう。 頭がボーッとしていたせいか俺は脱いだパンツまで凛に渡していた事を完全に失念していたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。 誤字報告してくれた方ありがとうございます、また何か気付きましたらよろしくお願い致します。
また今作に登場している朝日奈 柚と新村 啓、鮎川 鈴菜は過去作「美少女に抱きしめられて+」の主人公とメインヒロインなのでもし興味があればそちらも読んでみて下さい。




