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トモの叫び

ブラックホールSWへの突入。それが可能な事であり、更にはその方法までイザナギの残した遺跡やユタカのDNAに刻まれた唄で知る事は出来た。

 だが、一つ。ユタカのDNAについて皆に伝えていない事実がある。それは…



 トモさん、ジーノさん、ヒルコさん、ジュン、俺、ユージの5人は、サラク山内部にあるイザナミ中央コントロールルームにいる。


 コントロールルームは円形状の部屋になっていて、部屋の中央部には人工衛星イザナミが半透明なホログラム表示されている。

 部屋の周りにはグルリとモニターが並び、様々な情報が映し出されている。


「市街区収容開始致しますわ。」

ジーノさんがパネルを操作すると、中央に映し出されたイザナミの表面がパタパタとひっくりかえる。



「トモ様、重力波がSWを捉えましたわ。ヒルコさん、地球への座標固定はよろしくて?」

「大丈夫だよっ。月って衛星との間のラグランジュポイントに固定したよっ。」

「トモ様、SW突入準備完了ですわ。」


 中央ホログラムはSWを中心に捉えた映像に切り替わり、その周りを回るイザナミの軌道が白線で示される。

 イザナミとSWを結ぶ黄色い破線が重力波だろう。

 そして、赤の線がイザナミの白線から螺旋を描いてSW中心に向かっている。これがジャンプまでのルートと思うのだが…


「ユ…ユタカさん…、この赤線はなんでSWの中心でぐちゃぐちゃになってるんですか…?」

 そう。ユージの言うように、SWの中心付近までは綺麗な螺旋を描いているのだが、中心では暴れ回るミミズの様になっているのだ。


「事象の地平面を超えるんだものっ、当たり前じゃないっ。太陽系人って、5次元も理解してないのっ?要は縦・横・奥行き・絶対時間・理りの5つの次元よっ?」

 クスクスと笑うヒルコさん。


「ことわり??私、勉強苦手なんでよく分からないですよ…。」

 もちろん、俺も意味不明だ…。


「余り時間も無いから、ワタシが簡単に説明するね。今いる空間が縦横奥行きからなる3次元って事は分かるわよね?そこに絶対時間を加えたものが4次元なの。Gコンはこの4次元に作用してるわ。」

 既に分からない…

「そして、事象の地平面は更に理りが加わるの。分かりやすく言うと、物理法則だとか常識だとか、ワタシ達が観測出来うる事象ね。」


「あ〜分かった!つまり、訳わかんない事が起こるって事ですね!」

 ユージと俺に続き、ジュンも理解の範疇を超えたようだ。


「まっ、太陽系人にはまだ早いって事だねっ。」

 またもやヒルコさんがクスクス笑う。


「兎に角。貴方達の常識の範疇を超える事象が起こると思うけど、驚かないでね。ザターンでは瞬間的な変化だから一瞬の現象で認識出来なかったんだけど、イザナミサイズだと事象の地平面を超えるまでに時間差…つまりラグが発生するからね。」

 トモさんの説明でもよく分からないままだった…。



「トモ様。そろそろ重力波を固定して突入に備えませんと…」

 ジーノさんの呼び掛けに俺達3人は目を覚ました。兎に角、これから訳のわからない事が起こるというのだから、いつまでもフリーズしている訳には行かない。


「分かったわジーノ。それでは重力波をロックして下さい。皆んな、突入するよ!」

 ジーノさんがパネルを操作すると、中央ホログラムの黄色い破線が青く太い実線へと変わる。


 次の瞬間、イザナミの軌道を示す白いリングがどんどんと縮まって来た。


「突入まで残り30秒!全員備えてっ!」

 俺の横で、トモは大きく叫んだ。

そして、俺の手を取りジッと見つめて来た。


「ユタカ、忘れないで。ワタシの事を!貴方が来るのを待ってるから。ずっと待ってるから!」

 トモの叫び声が聞こえた刹那、辺りは白い光のモヤに包まれた。

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