後編
ご覧いただきありがとうございます!
『卒業アルバムの君』の後編(完結編)となります。
高校時代、言葉にできないまま通り過ぎてしまった二人の距離の行方を、最後まで見守っていただけたら嬉しいです。
※本作はnoteにて先行公開した作品です。
3年に上がっても選択科目のコースの関係でクラスは一緒だった。
僕は勉強の学科教科は得意だけど、実技教科は苦手だった。
それでも、得意な実技教科があった。
それは、『情報』だった。
将来、パソコンを使った仕事がしたいと考えていた僕にとって情報の授業での文書作成や表計算ソフトを使った授業は楽しかった。
しかし、横には相変わらず結月がいる。
情報の授業も席は名簿順だった。
僕は情報の授業は評定5を取っていたし、当然、取りたかったので集中して授業を受けたかったが、隣の結月は、
「あれ?パソコンが変になった!」
「え?これどうすればいいの?」
と聞いてきた。
「先生の言う通りにすれば出来るだろ。」
といなしても分からないというので、僕は呆れた。
そして、マウスを持って手順を説明することにした。
その時にマウスを持つ、結月の小さな手と僕の手が重なってしまった。
僕は咄嗟に手を引っ込めたが、
(やってしまった!)
と思った。
結月の顔を見ると頬を赤らめていたように感じる。
僕は内心では思っていながらでも、
『ごめん。』
と、言えなかった。
そのことはクラスの誰に知られることもなく授業は終わっていった。
事故ではあるが、手を重ねてしまった瞬間、何かが変わった気がした。
いや、僕が結月のことを気にするようになったのだ。
しかし、高校3年生の9月に差し掛かっていて、お互い大学受験で忙しくなり、恋愛どころではなかった。
そして、そのまま、卒業式を迎えた。
卒業式。最後に高校に来る日。
何となく結月とはまた会える気がした。
連絡先も知らないくせに。
そして、卒業式の後のホームルームでも一言も話すことなくお別れをした。
月日は経ち、35回目の桜が咲いている。
僕はふと卒業アルバムを開いた。
すると、僕の隣で結月は微笑んでいた。
もう、お互い34歳になる。
もし、あの時、勇気を出して、
「好き。」
と言えば今頃、僕の家の台所で晩飯の準備をしていてくれたのだろうか。
一人ぼっちの部屋で結月がきゅうりを切る姿を思い浮かべた。
今でも、ずっと分からないことがある。
結月は僕のことをどう思っていたのだろうか。
結月は僕以外のクラスの男子と話しているところを見たことがなかった。
もし、もしも、僕のことを好きでいてくれていたのだったら……。
なんて卒業アルバムで微笑む結月と目が合って思った。
(了)
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
少し甘酸っぱくて胸がギュッとなるような余韻を感じていただけたら幸いです。
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【お知らせ】
10月14日(水)12:00より、連載小説『売れないっ!』(全51話)の毎日3回更新連載がスタートします!ぜひそちらもお楽しみに!
【注釈・補足】
※本作はnoteにて公開した原稿をベースに投稿しております。
※本作は日向坂46の楽曲『卒業写真だけが知っている』の世界観からインスピレーションを受けて執筆したフィクションです。
(とても素敵な曲ですので、気になった方はぜひ検索して聴いてみてください!)




