前編
ご覧いただきありがとうございます!
本作は、高校時代の記憶と切ない初恋を描いた短編作品(前後編)です。
少し懐かしくて甘酸っぱい雰囲気を楽しんでいただけたら嬉しいです。
※本作はnoteにて先行公開した作品です。
「もう、35回目の桜か。」
僕はそうつぶやいた。
僕が生まれてから35回目の桜。そして、彼女と最後に会ってから17回目の桜だった。
「もう!涼ちゃん、汗臭いんだけど。」
「仕方ないじゃん。体育の後なんだから。」
最初に出会ったのは小学生の時だった。
僕は佐伯涼太。彼女の名前は斉藤結月。そう、名簿の順で席が決まっていたので自然と結月の後ろに僕が座ることになったことがきっかけで話すようになった。
と言っても僕から話しかけることはなく、話しかけられるばかりだったが。
何かと結月とは縁があり、住んでいる地域も一緒だった。決して家が近いわけではなかったけど。
それに、結月は男子とは仲良くするタイプではなかったのに僕にだけ、小学生の時からちゃん付けで呼んでくれた。
そして、また何故か隣の席になり、汗臭いと指摘されるのだった。
こんな女子、全くタイプではなかった。僕が好きな子は上品でおしとやかな子だった。
中学校に上がっても同じ地域だったこともあり、同じ中学校。
こういうのを幼馴染なんていうのだろうか。いや、違う。ただの腐れ縁だ。
そして、また同じクラスになった。
中学校の時はあまり話すことはなかった。
中学生は多感な時期ということもあり、男女で話していると付き合っていると冷やかされるからだ。
ましてや、僕は陰キャラだから結月からは話しかけづらかったのだろう。
そして、その頃はまた違う女の子のことが好きだった。
高校は受験があるので流石に同じ学校にはならないだろうと思いつつ、入学式に席に着くと、見覚えのある姿があった。結月だ。
「涼ちゃんとまた一緒のクラスか…。まあ、よろしく。」
「う、うん。」
僕は女性慣れしてないことや中学生から引き続いた陰キャラが尾を引いて、
『う、うん。』
としか、答えられなかった。
僕と結月はそれぞれ仲の良い友達が出来ていった。
「紹介するよ。こちら佐伯涼太。で、涼ちゃんって呼んでいる。」
「ど、どうも。」
女性慣れしていないことをからかうように教室の後ろで友達に紹介された。
「そして、こちら近藤麻友ちゃん。」
「初めまして。よろしくね。」
近藤は丁寧に挨拶してくれたのに僕は……。嫌悪感が襲ってくる。
結月は前の席の近藤に声をかけて仲良くなったそうだ。
(全く、席が近い人と仲良くなるの得意だな……。)
と僕は思った。
近藤の見た目は派手な感じで校則で禁止されているメイクもしている様子だった。
「涼ちゃん!鞄取って!」
「え!?なんで?」
体育の後、教室に鞄を置いたまま体育に結月は向かうので毎回のように男子更衣室と化している教室にある鞄を取るように指示された。
「麻友ちゃんのも!」
「え?どれ?」
僕は女子の手すら繋いだことがないのに、女子の持ち物を持っていいのか。ましてや、クラスの男子に見られていたらなんて思われるのか、ドキドキしながら二つ鞄を抱えて教室を小走りで出ていった。
「サンキュー!涼ちゃん!」
「ありがと!」
内心、
(軽いな……。)
と、思いつつ、
(どれだけドキドキして鞄を運んだと思っているのだ。)
と、憤りながらも、女子に頼られるということの嬉しさがあった。
僕と結月は同じ高校に進学しているが、僕の方が勉強の成績は良かった。
それは僕が勉強が好きだったからだ。
なので、テスト前の自習の時間は決まって、
「涼ちゃん!数学の範囲分かる?」
「えっと…このページからここまでだけど。」
と伝えると、
「じゃあ、勉強教えて!」
と言われた。
自分の勉強を邪魔されるのは嫌だったが、女子から頼られることは鞄を運び出すこと同様、嬉しかった。
「ここは公式を使って……よって……従って……この答えになるんだよ。」
と、証明のような問題の解き方を教えていると、
「凄い!ドラマのガリレオじゃん!」
と、冷やかしてきた。
「だからあんまりでかい声で言うなよ!」
と、周りをキョロキョロしていると、結月はガリレオ、ガリレオとはしゃいでいた。
次の日直の時に学校へ行くと『佐伯』と名前を書くところを『ガリレオ』と書かれていて、これには内心、憤慨したが、それよりも早く誰にも見つからないように急いで消して『佐伯』と直した。
(続く)
最後までお読みいただきありがとうございました!
後編も近日公開予定ですので、二人の結末を最後まで見守っていただけると嬉しいです。
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【お知らせ】
10月14日(水)12:00より、連載小説『売れないっ!』(全51話)の毎日3回更新連載がスタートします!ぜひそちらもお楽しみに!
【注釈・補足】
※本作はnoteにて公開した原稿をベースに投稿しております。
※本作は日向坂46の楽曲『卒業写真だけが知っている』の世界観からインスピレーションを受けて執筆したフィクションです。
(とても素敵な曲ですので、気になった方はぜひ検索して聴いてみてください!)




