晴れ
本日晴天。天気の崩れもなく、軽快な一日となるでしょう。暇つぶしにつけていたラジオから聞こえる機械的な声が重たい遮光カーテンに吸い込まれて行く。これ以上聞く理由もないので雑に電源を切った。のろのろとベットから立ち上がる。軽快さとは無縁の動き。室内のコンピューターを起動する。青白い画面が光る。画面の向こうには無数のメッセージが流れている。
ここが私の居場所だった。暗い部屋からほとんど出ることはない。時折届られる食料を部屋に運び入れるためだけにほんの一瞬出る程度。それ以外は部屋に篭りきりの日々だった。いくつかのメッセージに返信し、他のページを開く。これまで起こった事、今日起こった事、これから起こるであろう事の記事に目を通し、暇つぶしのゲームを開いた。このゲームもプレイヤーがかなり減ってしまった。昔はもっと人数も多く、毎回違うプレイヤーと組む事もしようと思えばできたのに。今は馴染みのプレイヤーがログインすることすら、稀になってしまった。そのせいですっかりソロプレイが上達している。
新しいステージも、モンスターも、装備も何も更新されることはない。ずっと昔に公開された最難関ステージもただの暇つぶしになっている。その暇つぶしの場が残っていてくれることですらありがたいと捉えるべきか。同じ操作を繰り返す。繰り返す。繰り返す。同じボスを倒し続ける。何度も、何度も何度も。そうして時間が流れて暮れることを待つのみだった。ふと玄関チャイムが鳴る。PCの通知を見れば今日は食料と日用品が届けられる日だった。軽く準備をして玄関に向かう。扉を開ければ配達用のロボットが荷物の受け取りを待っていた。
指紋認証で荷物を受け取り、部屋に引き入れる。短時間でも外にいるのが辛くなってきた。箱を開ければ、中には味気ない人工食と飲料水前に数種の薬といつもの日用品。申請していた暇つぶし用の書物は却下されたらしい。ため息一つついていつもの場所にそれらをしまう。幸いなことに今回は味の種類が豊富だったのと、甘味が少し入っていた。書物の代わりだろうか。
カーテンの隙間から外を見る。すっかり荒廃した都市が広がっている。ある時、とある兵器によって地球上の人間はその過半数が穏やかに緩やかに減っていくこととなった。時間が残されていたのが幸いして最低限の生活を保てる程度の自動化は進んだが、やはり文化的な面では大きく衰退した。また全体の出生率も大きく下がり、これから人類は絶滅の一途を辿ることが数十年前に判明した。それからの人類は怠惰であった。最低限のライフラインを残しつつ、安寧の道へと進んでいった。私もその一人。生まれた時から運命を決定づけられ、この生活しか知らない。親も数年前に死んだ。この狭い部屋とインターネットが私の知っている世界の全てだった。そして私ももう長くはない。人類全体の寿命も短くなりつつあったのだ。いっときは100年が平均寿命であったこともある人類は今や30年生きられればいい方。かつて栄華を誇った人類の滅亡とはこうも惨めなものなのか。




