散る
まぁまぁうざったい。探し物が見つからない時というものはそれなりに。しかも隠されたものとあればいっそう。まったく。無駄に似せてきて、その中に放り込むとは。中々に面倒なこと。
毎回毎回よく隠すものだ。目当てを見つける時もあるが、見つからずそのまま諦めることもある。しかも探している間は世話役がそばにピッタリ張り付いてグチグチ何かいうものだから集中することもできない。
ジリジリしながら丁寧に見極めていく。よく似ているし、隠されているからすぐには見つからない。が、一つでも偽が分かればこっちのもの。そしたら本物を見つけられる。
気に入ったからキチンと印をつけたのに。後から分かるよう、誰が見ても分かるよう。それなのにわざわざ印を似せたものを作って集めて隠すとは。ここいらの連中はやっぱり小賢しい。普段は私の世話を不要なくらい甲斐甲斐しくするくせに、こういう時はしないのだ。
偽をさっさと見つけたい。いいかげん世話役の声がうるさいし、そろそろ夜が明ける。夜が明けたら探し物は永遠に見つからない。あぁ恨めしい。腹立たしい。さっさと家に帰りたい。さっさと見つけて連れ帰りたい。
イライラすると中々集中できない。どれも同じに見えてくる。本物は一つだけだというのにさ。しょうがないからちょっと脅しをかけてみる。時々これで連中はボロを出す。
グッと顔を近づけて、ニィっと笑ってやるだけだ。これが意外と怖いらしい。案外そういうところは可愛らしい。お、ちょっと動揺し始めた。これならきっといけるだろう。今回の連中は中々に怖がりな気質なようだ。
顔は崩さず、奇妙な動きもしてみるか。自分でもちょっと引くような動きだ。気味の悪い動き。あぁやっぱり怖いんだ。明らかに表情が変わったぞ。あとは声さえあげさせればこっちのもの。
そしたら最後の一押しだ。デカい声を出してやる。どこだどこだと怒鳴りつけ、床を力の限り踏みつける。壁を壊さんばかりに殴ったところで、一人悲鳴を上げた奴がいた。
偽物だ。声を出したやつは偽物だ。でもその中。偽物に囲まれた真ん中に本物がいた。見つけた見つけた。ようやく見つけた。いくら印を似せようと、いくら香を焚こうとも、声を変えることはできぬ。声さえ聞けばこちらのもの。偽が一つでも分かればこちらのもの。
見つけた見つけた。そう答えれば、偽物は蜘蛛の子散らすように逃げていった。残されたのは本物、ただ一人。ガタガタ震えてへたり込んでいる。
勝った勝った。私の勝ちだ。これは貰い受けていく。これは今から私のものだ。そう言ってお気に入りを抱え上げ、帰路に着く。
あぁ楽しみだ。これからコレをどうしてやろう。食ってもいいし、新しくオモチャにするのもいい。いっそしばらく飼ってみるか。次々にイイコトを思いつく。しばらく悩むのもいい。ここ最近負けることが多かった。久しぶりの勝ち。
あぁ楽しみだ。




