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双子座

 ねぇ、君。ふふ。君。名前わかんないや。ずっと一緒にいたから。ねぇって言えば君は返事をするのだもの。名前は必要なかった。僕達は双子で、産まれてからずぅっと一緒にだったよね。朝起きるのも、ご飯食べるのも、病気になるときだって。トイレに行くタイミングが一緒だったのはちょっとばかし困ったけど。お洋服もお揃いじゃないと嫌だった。全部一緒じゃないと嫌だって僕らがぐずると父さんも母さんも困ったように笑って「しょうがないなぁ」って聞き入れてくれたよね。


 僕達は常に一緒だった。なにもかも。だから僕だけが病気になったとき、ちょっと嫌な予感はしていたんだよ。なにかあるんじゃないかって。僕の予感は当たってた。君がいなくなっちゃったんだもの。僕がベットに横になって熱でウンウンうなされて、何日もボーッとして、ようやく頭がシャッキリしたときには君がいなかった。後から聞いたけど君は僕のためにお医者さまを呼びに行ってたんだね。ありがとう。でもビックリしたよ。起きたら君がいなくて父さんと母さんが悲しげに抱き合ってたんだ。母さんは父さんにすがりついてシクシク泣いているし、父さんは母さんを抱き締めて時々僕をチラリと見ながら黙りこくってた。


 それからどんどん人はやって来て僕達を可愛がってる隣ん家のおばさんなんか僕にすがって坊、坊って言うんだ。よく柿をくすねに行ってた西のケンじいは顔をくしゃくしゃにして僕の頭を撫でた。金物屋のたまちゃんは目を真っ赤に腫らしてハンカチを握りしめてたっけ。とりあえず君がいなくなってから凄く大変だったんだよ。まったく、お医者さまなら隣町にいるのに。隣町にひとっ走り行けばいいものをわざわざ汽車まで乗っていくのだもの。そりゃぁ見つかんないよ。こんな遠くとぉくに来ちゃったんだもの。


 でも見つけた。僕は君を見つけた。長い間探してようやく見つけた。さ、行こう?一緒の汽車に乗るんだ。前みたく手を繋いでさ。ちょっと長旅になるかもしれないけど大丈夫。僕達が一緒ならどこにでも行けるよ。ほら、こっちの汽車だよ。間違っても反対のものに乗っちゃあダメだからね。ねぇ、君。どうして僕の手を取ってはくれないの?ねぇ君。なんでずっとうつむいているの?ねぇ君。どうして突っ立っているのさ。ねぇ君?どうしたの?待って。待って。そっちは反対、真逆に行く汽車だよ。そっちじゃないよどうしてそっちに乗ろうとするんだってば。こっちだって言ったじゃないか。ほら、そっちのはそろそろ出ちゃうよ。早く降りてこっちに乗ろう?ね?


 なんで、どうして。僕達ずっと一緒だったじゃないか。これからも一緒のはずだったじゃないか。どうして今さらそんな事言うんだ。どうして。ねぇどうして。ねぇ行かないでよ。ねぇどうして離れ離れになろうとするの。ねぇ僕はずっと君を探してたんだよ。ねぇ君と一緒にいたいんだ。ねぇ君と会うために僕は。嗚呼扉が閉まってしまう。ねぇ、ねぇ、ねぇ、行かないでよ、一緒にいてよ、お願いだ。汽笛が鳴った、列車が、列車が。


 ねぇ!どうして!

 ねぇ!なんで!

 ねぇ!僕を置いて行くの。

 ねぇ!1人にしないで。

 ねぇ!

 ねぇ!君!

2026/7/7 諸事情により投稿しません。

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