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星祈りの少女は、傷ついた世界を旅する  作者: 天野みんと


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第六十一章 風は巡る

 風の源流は静かだった。

 弱くなった流れ。

 頼りなく光る風石。

 けれど、完全には消えていない。

「まだ流れてる」

 セリアが呟く。

 長老は頷いた。

「そうだ」

「だから間に合う」

 ユークが顔を上げる。

「何をすれば?」

 長老は風石へ近づくとそっと手を添える。

「風は巡るものだ」

「止まれば弱り、流れれば戻る」

 そして、子妖精たちを見る。

「今回はお前たちの出番だ」

「えっ」

「えっ」

 子妖精たちが固まる。

 長老は笑った。

「風の道を巡れ」

「歌え」

「遊べ」

「笑え」

 セリアは少し驚く。

 もっと特別な方法かと思った。

 魔法とか、儀式とか、そういうものを。

 でも違った。

 風の民の答え。

 それは、ただありのまま生きること。

 子妖精たちは顔を見合わせる。

 そして、

「分かったー!」

 一斉に飛び出した。

 風の道を駆ける。

 笑う、歌う、追いかけっこする。

 賑やかな声が広がる。

 その様子を見ながらセリアは思う。

 これも、魔障への向き合い方なのかもしれない。

 悲しみを追い払うのではなく、流れを作り、淀ませない。

 そうやって守る。

 やがて、風石の光が少し強くなった。

「戻った」

 ユークが呟く。

 本当に少しだけ。

 でも確かに流れは戻っていた。

 妖精たちが歓声を上げ、長老も微笑む。

 リリカは拍手していた。

「よかったね!」

 セリアも笑う。

 これで解決、そう思った。

 だが、長老だけは空を見ていた。

 ◇

 風は戻った。

 けれど、戻ったのはこの場所だけ。

 根本原因は分からない。

 なぜ弱ったのかも、まだ何も。

 風が吹く。

 穏やかな風。

 だが、長老の胸には小さな不安だけが残っていた。

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