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新訳 北条五代記 〜 近所の隠居が書いたメモがガチの戦記だった件 ~ 北条の覇道、その系譜  作者: 条文小説


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0 プロローグ

挿絵(By みてみん)


北条五代記ほうじょうごだいき』は、三浦浄心が著した、後北条氏にまつわる話題を中心とした仮名草子・軍記物語。確認されている最古の版本は寛永18年(1641年)刊。万治2年(1659年)版が流布本で残存数も多い。ともに全10巻だが内容には改変がある。出典:Wikipedia

【プロローグ】


 武蔵の国、豊島あたりの片隅に、ひとりの隠居した爺さんが住んでいた。爺さんはいつも夕日を背に浴びて日向ぼっこをしながら、余生を気ままに過ごしていた。


 そんな爺さんには、ある趣味があった。自分の見聞きしたことをひたすら書き溜めること。その数、なんと全32冊。爺さんはそれを『見聞集』と名付けていた。といっても、誰かに見せるつもりなんてサラサラなかったみたいだ。


 ただの下書き草稿のまま、部屋の隅に放り出されていた。完全に自分だけの「推し活」というか、ただの暇つぶしだったんだろう。


 ところが、俺は爺さんと古い付き合いだったので、ある日その部屋に上がり込んで、中身をパラパラと覗いてみた。


……正直、ビビった。


 そこには、鎌倉公方の足利持氏が滅亡した永享11年(1439年)から、慶長19年(1614年)までの……つまり、173年間にわたる関東の戦乱と、激動の歴史がびっしりと記されていた。特に、北条早雲から氏綱、氏康、氏政、そして氏直までの「北条家五代」にわたる武勇伝はまさに圧巻。


 俺はもともと関東の人間だ。そんな「地元の英雄」の物語を読まされて、興奮しないわけがない。たまらず、その膨大なコレクションの中から北条家に関するエピソードだけをピックアップして、全10巻のシリーズとしてまとめ直すことにした。それが、この『北条五代記』だ。


 あ、ちなみに⋯元ネタがバラバラなところから抜き出したので、時系列が少し前後しちゃっている部分もある。でも、そこは爺さんの見聞集のライブ感を重視して、あえてそのまま書き写しておいた。関東173年の歴史の重み、ぜひ楽しんでいってくれ。


【解説】

 さて、今回紹介する『北条五代記』。「これ、誰が書いたの?」っていう設定資料的な話をまとめておこう。


1. 作者:三浦浄心(本名:三浦五郎左衛門茂正)


 この三浦浄心、実はただの日向ぼっこをしていたじいさんではない。ルーツを辿れば、あの名門・三浦一族の血を引くサラブレッドだ。永禄8年(1565年)に生まれて、全盛期の北条氏政に仕えていたガチの(元)北条家臣だ。


 天正18年(1590年)の豊臣秀吉による関東侵攻「小田原征伐」の時も、しっかり小田原城に籠城していた。つまり、歴史の決定的な瞬間を最前線で見ていた「生き証人」って訳だ。


2. 異色のキャリア:武士から商人へ、そして執筆活動へ


 三浦浄心は、北条家が滅亡した後どうしたか。しばらく三浦半島でスローライフを送っていたが、その後、成長著しい江戸へ上京する。そこでなんと、日本橋の伊勢町で「商人」にジョブチェンジする。


 戦場育ちのゴリゴリの武士かと思いきや、実は若い頃から文芸を嗜んでいた三浦浄心は商売の傍ら、自分の経験を活かして執筆活動をスタートさせる。


 戦記ものから、江戸初期の裏話を集めたエッセイ(『そぞろ物語』『慶長見聞集』)まで、数々の神資料を残した。


3. 『北条五代記』が「神本」と言われる理由


 ぶっちゃけ、小田原北条氏について書かれた本は他にもいくつかある。(『小田原記』とか)でも、この三浦浄心の『北条五代記』は格が違う。


 他の本が伝聞ベースなのに対して、三浦浄心は後半部分を実体験「自分の目で見たこと」として書いているからだ。


 古い歴史は既存の資料を参考にしつつ、新しい歴史は「俺、現場にいたし。」という圧倒的なリアリティで書き切る。歴史マニアからすれば、まさに「神本」だ。


4. 晩年とエピローグ


 人生の後半戦、彼はあの伝説の僧侶・徳川家康のブレーンである天海大僧正に弟子入りして出家。名前を「浄心」と改めた。


 正保元年(1644年)、80歳という大往生。戦国時代という激動の時代に80歳まで生き抜くとか、サバイバルスキルが高すぎる。


 ちなみに三浦浄心のお墓は、鉄道工事の関係で今は谷中の東漸院に移されているんだが、生前に自分でお墓を建てていたという準備の良さ。最後まで「記録魔」で「用意周到」な、ちょっとクセの強い爺さんだった。

明治32年5月 岸上きしがみ質軒しっけん 記




校訂 北条五代記 博文館編輯局(明治三十二年)




北条五代記 序


 武陽ぶやうとよしまのかたはらに、はふれたるひとりのおきなあり。せなか夕陽せきやうにさらし、衰世すゐよけうするびにや、見聞し事をきあつめたる双紙さうし三十二冊あり。是を見聞集けんもんしうと名付く。され共、他見たけんをよぶ事なく、草案さうあんのまゝ打をき、たゞをのが気味をなぐさみぬ。われ旧友きうゆうなれば、彼翁かのおきな室内しつないに入て、此書しよ披見ひけんするに、むかし鎌倉かまくら公方くぼう持氏公もちうぢこう永享ゑいこう十一年に御 滅亡めつぼうなり。それより以来このかた、関東くわんとう諸国しよこくみだれ、たゝかひやむ事なく、慶長けいちやう十九 さいまで、百七十三年、世のうつりかはる次第しだい、なかんづくたう時代じだい栄久ゑいきうしるしたり。扱さて又此内に、北条早雲ほうでうさううん入道 氏茂うぢしげより、氏 つな、氏 やす、氏 まさ、氏 なをまで、五代の弓箭ゆみやの事あり。相州さうしうぢう人、往年わうじゆかしさに、北条ほうでう沙汰さたばかりをひろひ出し、今又十 さつにあつめ一 とし、是を北条五代 と名付たり。数十 くわんよりき出しも一所によするゆへ、五代の次第しだいおなじからず。本書ほんしよのごとく、前後ぜんごを取まじへ、うつはんべる者也。


北条五代記 解題


 本書は三浦浄心の撰する所なり。浄心名は茂正、五郎左衛門と称す。其祖は三浦介道寸と同族なりといふ。永禄八年に生れ、天正五年に小田原の北条氏政に仕へ、同十八年には小田原籠城の中に在り。北条氏亡びける後は、暫く三浦に閑居せしが、尋で江戸に来り、伊勢町に住して商賈となれり。浄心戎馬の間に長ずと雖も、少より文藻に嫻ひて述作を好み、北条氏の世の戦事を記述しては、本書并に見聞軍抄あり。江戸開府の頃の世事を編録しては、そゞろ物語、慶長見聞集等あり。共に史家の好資料たるが中に、世に小田原北条の事を記せし者は、浄心の此書を以て第一とすべし。小田原記、東乱記などの企て及ぶ所にあらず。本書小田原以前の事は、東鑑もしくは北条九代記等に拠りたらんも、其以後は悉く見聞の及ぶ所を以て記せり。五郎左衛門江戸に来りてより、晩年天海僧正に帰依し、入道して浄心と称しぬ。かくて正保元年三月十二日、八十歳にして歿れり。其奉持せし弥陀の像は、浄心の肖像と共に、上野寛永寺中普門院に伝へたりといふ。墓は普門院に在りて、新古二碑ありしが、其地域の鉄道会社用地となりしより、谷中東漸院の墓地に移されぬ。古碑の背に、寛永十五年〈壬寅〉七月十七日、三浦五郎左衛門尉茂正と刻せり。是は逆修なるべしとなり。

  明治三十二年五月     岸上質軒 識


北条五代記 總目錄


北条五代記巻第一

一 伊豆早雲平氏茂由来之事

二 関東天文乱之事

三 上杉朝成を生捕事

四 小田原北条家旗馬じるしの事

五 犬也入道弓馬に達者の事


北条五代記巻第二

一 北条氏綱と上杉朝定合戦の事

二 敵一人を三人して討捕事

三 両上杉たゝかいの事

四 福島伊賀守河鱸を捕手柄の事

五 関東永楽銭。すたる事

六 岡山弥五郎木下源蔵討死の事

七 古今弓箭の沙汰の事


北条五代記巻第三

一 北条氏康と上杉憲政一戦の事

二 房州里見家の事

三 関八州に鉄炮はじまる事

四 源義明公滅亡の事付首実検の事

五 軍法昔にかはる事

六 両上杉と平氏茂戦ひの事

七 応永より慶長迄関東合戦の次第の事


北条五代記巻第四

一 北条氏政東西南北と戦の事

二 関東長柄刀の事付かぎ鑓の事

三 北条氏茂百姓憐愍の事

四 神田神事能の事付江戸の城はじまる事


北条五代記巻第五

一 北条氏直と滝川左近将監合戦の事

二 関東昔侍形義異様なる事

三 下総高野台合戦の事

四 八丈島へ渡海の事

五 江雪入道一興の事付男女別の事

六 清水太郎左衛門大力の事

七 昔矢軍の事

八 前陣軍に討負二陣にて切返す事


北条五代記巻第六

一 上杉輝虎武田信玄小田原へ働事

二 嫠男とやもめ女うつたへの事

三 百姓気なげをはたらく事

四 北条氏康和歌の事

五 欲心身をほろぼす事


北条五代記巻第七

一 伊勢新九郎伊豆相摸を治る事

二 駿河海にて船軍の事

三 上杉三郎景虎滅亡の事

四 東海にて魚貝取尽す事付人魚の事

五 兵法勝負の事


北条五代記巻第八

一 物見の武者はまれ有事

二 北条氏康。智仁勇の徳有事付実朝公の事

三 関東侍老て今誉をあらはす事

四 東国山嶺に狼煙を立る事付大伴黒主が事

五 北条家の軍に貝太皷を用る事

六 大亀陸へあがる事


北条五代記巻第九

一 三浦介道寸父子滅亡の事

二 関東侍天下に望みをかくる事

三 関東の乱波智略の事

四 戦船を海賊といひならはす事


北条五代記巻第十

一 三浦三崎宝蔵山旧跡の事

二 秀吉公関東発向付豆州山中落城の事

三 小田原籠城の事

四 小田原籠城捨曲輪へ攻入事

五 笠原新六郎氏直へ逆心の事

六 氏直没落の事

〜参考文献〜

北条五代記(博文館編輯局校訂) - Wikisource

https://share.google/FGo71GTKh9plFa7d0


〜舞台背景〜

 この作品では原典を併記していますが、これがなかなか厄介で、単にWikiなどから貼り付けると元のルビが崩れて文章がグチャグチャになります。そのため原文の体裁は、ストーリーを考える数倍の手間を掛けて整えています。

 せっかくなので、小説と原文を見比べながら、原典の雰囲気を感じてもらえたらと思います。

 この「小説+原文併記」という形式は、たぶんなろうではあまり見ない試みだと思います。

 もし面白い試みだと思って頂けたら☆5とは申しませんが、☆3〜4くらい頂けると嬉しいです。

 逆に「ウ~ン」と思われた方は、遠慮なく☆1で意思表示して頂ければと思います。率直な感想として謹んで承ります。

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