第五話
日が沈み、あれだけ賑やかだった町にも暗闇が訪れる。沙柚は1人細い路地裏に立っていた。あの後も色々な人達から情報を集め、今夜ここに来ると判断したのだが、これは推測にすぎないし正直来ることは無いと思っていた。
・・・どのぐらい経ったのだろう。今にも雨が降りそうな空を眺めていた彼女は、ふと近づいてくる足音に耳を澄ませた。どうやら酔っているらしい、足元がおぼつかない。上機嫌なのだろう、よく分からない鼻歌を歌っている男。・・・だが、そんな事どうでも良い。気配を消し息を潜める。沙柚にとってはそんな酔っ払いより、その後ろの男の方が気がかりだった。ただの通りすがりだとは到底思えないほど、静かに歩くのだ。影で息を潜め、待つ。男との距離がだんだん狭くなってきた。《グサリ》そんな音と共に鼻歌が聞こえなくなる。
『今だ!』沙柚は後ろから一太刀あびせた。たとえどんな人間であれ、人を殺せば隙が生まれる。目の前の光景に、恐怖・・・もしくは快感を感じるらしい。歴史上の人物を見てみても、その一瞬の隙を突かれ命を落とす者は少なくない。この男もそんな人になったはずだった・・・。