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第三話
京都のある路地裏、そこに彼は立っていた。
浪士 「お前、何者だ!」
カタカタと震える手で刀を握る目の前の男を見ていると、自嘲にも似た何かが湧き上がってきた。
? 「別に・・・お前に名乗る名などない。」
言い切らぬうちに先ほどまで犬のように吠えていた男はドサリと崩れ落ちた。
一体自分は何をしているんだ・・・。彼はそう思いながら空を見上げる。
綺麗な空であった。雲が1つもなく、星も満月も見える。
だが、彼には全てがくすんで見えた。何一つ綺麗だと思うものはない。
もう慣れた独特のこの臭いも何もかもが自分を嘲笑っているように思えて仕方がなかった。
どこからかバタバタと走ってくる人の足音が聞こえた。おそらく役人達の見回りだろうなと思う。赤く染まってしまった刀をビュッと振り、鞘に戻すと彼は何事もなかったかのようにその場を立ち去った。
彼の名は、岡田以蔵。
岡田 「武市先生・・・。俺はあなたの為に刀を振るいます。」
そのつぶやきは誰にも届くことはない。