第十九話
稽古は私だってするから普通なのだが、その姿がいつもの彼とは違っていたのである。岡田さんはいくら色白で細いといっても男なのだ。しっかりとした肉体で、もし話しかけても目の行き場に困る。
今の私は真っ赤になっていると思う。
・・・あれ?なんで顔が赤くなるの?
今まではそんなことなかった。1人自問自答を繰り返していると、いつの間にか私の後ろに人が立っていた。
岡 「何している?」
出会った当初よりは少し柔らかくなったが、やはりまだ冷たい声だ。
「!?」
驚いたせいで持っていた桶に入っていた水が溢れた。しかもその水は、運悪く私が左手で持っていた伝言用の紙にかかった。
なんという花かは知らないが、とても綺麗で気に入っていたものだったという・・・悲劇。
岡 「す・・・すまない。そこまで驚くとは思っていなかった。」
本当に申し訳なさそうに謝るこの人を見ていたら、こんなところで考え事をしてしまっていた私の方が悪い気がしてきた。・・・いや、確実に悪いだろう。
紙がないから、大丈夫ですよ。ということを伝えようと首を横に振ったのだが、彼は何か勘違いしたらしい。
さらに申し訳なさそうにしたかと思うと、私の手から布を取り床を拭き始めた。
岡 「出かけるぞ。」
彼はそう言うと、私の手を引っ張った。
それだけで触れられている所が妙に熱を持って熱くなるのだから、わからない。