第十六話
それからしばらく・・・。
結局、足が完全に治るまで沙柚は以蔵の宿で世話になった。何度も、もう良いと主張したのだが、「また奴らのようなのが出てきたらどうする」とかなんだかんだ言われ、言いくるめられてしまったのだ。
もとは戦いたくて一緒にいたのだが、今は別にそんな事思わなくなった。
一緒にご飯を食べ、話をし、空を見る。
たったそれだけの事なのに今までとは天と地の差であった。それに、なぜか彼がそばに居ればあの嫌な夢も見なくてすみ、とても居心地が良かった。今となっては離れたくないなどという図々しいにも程がある事さえ思ってしまうのだ。
岡「本当に行くのか?」
岡田さんのその言葉でさえも、自分の良いように解釈してしまう自分の頭が恐ろしい。
『これ以上迷惑をかけるわけにはいきませんので。』
そう書けば、彼は少し顔を歪めた気がした。
きっと本当はそんな事ないのだけれど・・・。
岡「・・・せめて、お前の宿まで送っていく。」
➖一緒に居たい。
そんな思いが強くなり、泣きそうになるのをぐっとこらえて歩き出す。
いつか別れなければならない。そんな事、分かっていた。だが、実際にその時になれば諦めきれないのだ・・・。