第十三話
昨日う、浪士に囲まれながらも懸命に戦っていた奴は、かなり怪我をしていた。
気を失い、道に倒れてしまった。そのままにするのはまずいなと思い宿に連れ帰り、怪我をしていた足を軽く手当てする。その後、俺は顔を洗うために井戸へ行ったのだが・・・。帰ってきて驚いた。いや、きっとその場に居合わせたのなら誰でも驚くだろう。
連れ帰った怪我人が布団を片付けようとしていたのだ。
「何をしている」そう声をかけると、驚いたようで布団を落とした。悪戯が見つかった子供のようにオロオロしているそいつを見て、もう1度問うと紙と筆を取り出した。
どうやら声が出ないらしい。スッとそいつが見せた紙に書いてあることを見て、また驚かされる。
『布団を片付けようと』
そんな事、分かっている。俺が聞きたかったのはなぜ、そんな事をしていたのか・・・という事なのだが、どうやらこいつは勘違いしたようだ。もう1度聞きなおそうと口を開けた瞬間、またそいつは紙を差し出してきた。
『私と戦ってください』
・・・何言っているんだこいつは。思わず眉をひそめたが、こいつは本気らしい。昨日怪我をしたくせに、これ以上傷を増やしてどうする。俺はため息をつき、ぐちゃぐちゃになっている布団をまた敷き直す。奴はキョトンとしている。
「・・・寝ろ。」
と言うと、口を開けてこっちを見ていやがる。何言ってんだこいつ・・・などと失礼な事でも考えているのだろう。
「傷があるだろう、その状態では止めておけ。戦うとしても治ってからだ」そこまで言うとこいつは納得したようだったが、今度は俺の顔を凝視し始めた。
「何だ・・・」と問うとへにゃりと笑顔になり、大人しく布団に横になった。
部屋はもう明るくなっていて、鳥の鳴き声が聞こえる。俺は部屋の隅に座り規則正しい寝息を立てて眠るそいつを見た。
ーこういう奴は嫌いじゃない。ー
・・・なんて、言ってはやらないが。




