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第十一話 XXI型Uボートの凱歌

 前回XXI型Uボートが初めての実戦に参加しました。

 そして今回はその続きです。


 ちなみに短めな上、今回が5月最終の投稿になる見込みです。

1943年10月8日世界標準時1016(10時16分)、北大西洋。

 北大西洋の灰色の海域は、今日も死の戦場と化していた。護送船団「ONS」を護衛する連合国軍の艦艇とソードフィッシュ雷撃機の猛攻を受け、ドイツ海軍のUボート隊は既に壊滅的な打撃を被っていた。VII型とIX型に分類される9隻が海底に沈み、冷たい大西洋の底でUボート乗りたちの墓標と化していた。

 しかし、その惨劇の中で、異様な影が静かに動き続けていた。


 XXIA型Uボート「U-2501」――総統閣下の期待を一身に背負った新型潜水艦が、既に大西洋に姿を現していた。4隻のXXIB型Uボートと共に連合国軍のASW網を巧みに掻い潜り、獲物(護送船団)に肉薄していた。

 一方で旧来のUボートであるVIIC型Uボート「U-267」は再度の襲撃を試みたが、連合国軍のASW網を前に命からがら離脱していった。


同日世界標準時1020(10時20分)、合衆国海軍大西洋艦隊司令部。

 合衆国海軍大西洋艦隊司令部は護送船団「ONS」から発せられた悲痛な救難信号を受信した。近くの航空基地から直ちにPB4Y(シーリベレーター)哨戒機とPBY-5A(カタリナ)飛行艇が緊急発進する。

 しかし、その5分間すら、戦場は容赦なく動き続けていた。


「U-2501」の艦内は、静寂に包まれていた。エングルベルト・エンドラス艦長は潜望鏡を上げることもなく、ただ聴音員の報告に耳を傾けていた。新型の水中聴音装置は、従来型を遥かに凌駕する精度で海中の音を捉えていた。

「……民間貨物船“リオ・パラナ”、針路と速力を共に確認。距離は三海里以内。どうやら軽荷のようですが……」


 それは護衛空母“HMS バイター”だった。元は貨物船“リオ・パラナ”として建造中だった船を急遽改装したものだ。航空母艦特有の推進(ギヤードタービン)音ではなく民間船の鈍重な響き(ピストンエンジン音)をそのまま残していたため、「U-2501」の乗組員たちはこれを単なる大型貨物船と判断していた。


「それでも獲物は獲物だ。撃沈する。」

 エングルベルト・エンドラス艦長の声は低く、冷徹だった。総統閣下が与えてくれたこの先進的な艦は、従来のUボートとは全く異なる存在であった。高速水中航行能力と優れた静粛性、そして強力な聴音装置。それらが今、連合国軍の目を欺いていた。


同日世界標準時1023(10時23分)

「U-2501」は貨物船“リオ・パラナ”を雷撃するのに最適な射点へ滑り込んだ。

「魚雷、発射!」

 二本のT3(G7e)FaT魚雷が、静かに発射管から吐き出される。電気ウナギと呼ばれた最新型の電動魚雷は、目立たない航跡を残しながら獲物へと迫る。


 最初の魚雷は、わずか6秒後——「HMS バイター」の竜骨直下、水面から9.5メートルの深さで炸裂した。凄まじいバブルパルスが船体を叩き割り、鋼鉄の竜骨をねじ曲げる。護衛空母は二つに折れて甲板に並んだ航空機が次々と海へと滑り落ちていく。


 もう一本の魚雷は最初に外れたものの、FaTのプログラムに従い右に180度旋回。再び船団の中を縫うように泳ぎまわるとT2-SE-A1型タンカーの船尾に命中した。タービン発電機が破壊され、水蒸気爆発が船内を蹂躙する。タンカーは炎を上げながら、ゆっくりと海面下へと沈んでいった。


同日世界標準時10時26分

 護衛空母「HMS バイター」が沈んだことで、船団を守る航空戦力が完全に失われた。これによりXXIA型Uボート「U-2501」と4隻のXXIB型Uボートを止めることが殆ど不可能となった。護送船団「ONS」は、もはや抵抗らしい抵抗も出来ず、次々と魚雷の餌食になっていく。


同日世界標準時10時31分。

 ようやく到着したPB4Y(シーリベレーター)が上空に姿を現し、AN/CRT-1ソノブイを投下した。一隻のIXC型Uボートがその探知網に引っかかり、Mk.24機雷(FIDO)によって撃沈されたが、既に遅すぎた。


同日世界標準時10時38分。

 護送船団「ONS」は全滅した。

 灰色の海面には、油の染みと漂流物、そして数百名の絶望した生存者だけが残された。U-2501の発令所ではエングルベルト・エンドラス艦長艦長が静かに唇を噛んでいた。


「これが……総統閣下が我々に与えてくれた力だ。」


 彼は知っていた。この一戦が、単なる一つの船団攻撃ではないことを。大西洋の戦いの趨勢が、歴史の歯車が、少しずつ、しかし確かに変わり始めていることを。


 XXI型Uボートの影は、まだ北大西洋の闇に溶け込んだまま、次の獲物を求めて静かに動き続けていた。

 前回XXI型Uボートを混ぜた群狼戦術により護送船団に大きなダメージを与えましたが、どうやらその裏でUボート側にもVII型UボートとIX型Uボートが「U-267」を除いて全滅するという大きな被害が出ていたようです。


 あと艦長のエングルベルト・エンドラス中佐以下「U-2501」クルーは護衛空母「HMS バイター」を航空母艦と気付かず、貨物船と思い込んで雷撃したみたいです。まあ護衛空母って元々貨物船やタンカーといった商船を基にされた補助航空母艦(ACV)(後の護衛航空母艦(CVE))ですからね。

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