episode,Ⅴ:迎え撃つ権天使
【登場人物】
*釘鎹聖綴(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。
*柊ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。
*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。
☆気に入って頂けましたらお気に入り登録をお願いいたします‼
ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブの身長に付け加え、背にある大きな翼もあって彼の姿はとても大きく見えた。
「あ……あ、あなたは、天使か?」
「さぁてな。それすらも謎だ」
ナムウドッグはぶっきら棒に返答する。
「悪魔や……、まして今言った破壊者がこの天国に来れる筈がないですよね。だからきっと、あなたは天使だ」
「……フン」
「とりあえず、そういう事にして先に進もうぜナムウ」
「うむ」
柊ヴェルハルトの声掛けに、ナムウドッグは首肯すると彼を抱き上げる。
「待ってくれ! 私も連れてってくれ!」
ユスティニアヌスの突然の訴えに、ナムウドッグは彼を見下して言った。
「生憎、定員オーバーだ」
これにヴェルハルトも、ナムウドッグの腕の中で言った。
「その加護天使とやらに、連れてってもらうんだな」
ヴェルハルトの言葉を合図の様に、ナムウドッグは翼を大きく広げると力強く羽ばたいて、空の彼方に姿を消してしまった。
金星天を目指して宇宙空間を光速移動している時だった。
「止まれ厄災よ」
「この先にお前を行かせるわけにはいかん」
そうして姿を現したのは、やはり大多人数の権天使だった。
大天使の頭で、大天使達の指導者的な存在だ。
皆、槍を携えている。
「ついでだ。お前等に問う。我は一体何者なのか、知らないか」
悠然とした様子で、怯む事無くナムウドッグが権天使達に尋ねた。
「貴様は厄災、"呪われし子"だ‼」
「……まぁ、厄災扱いされている以上、今更呪いの子でも驚きはしないがな」
ナムウドッグは言うと、腕に抱えているヴェルハルトに、何やら魔力を使用した。
「これはお前を守る結界と飛空の力だ。我は今から連中の相手をする故、ここでおとなしく待っていてくれ」
言うとナムウドッグは、そっと腕の中のヴェルハルトを下ろした。
「……スッゲ。俺、宙に浮いてる」
ヴェルハルトは驚愕している中で、ナムウドッグは三言、言い残した。
「そもそも宇宙空間は無重力だが念の為。面白がって彷徨うでないぞ。ここでおとなしく待っていろ」
「了解。分かった」
それを確認してからナムウドッグは、大多数の権天使の元へと突っこんで行った。
そんなナムウドッグを待ち構えていた権天使の一群は、手に持っていた槍を一斉に同時に投げ放った。
権天使の輪の中にいるナムウドッグは片手を同時に突き出すと、グルリとその場を一回転した。
するとナムウドッグの手の平スレスレで全ての槍がピタリと止まったかと思うと、ナムウドッグに向いていた槍の先端の矢尻が唐突に、ギュルンと柄の方の先端へと移動したではないか。
そうして矢尻が周囲を取り囲む権天使達の方へ向いたかと思うと、目にも留まらぬスピードで権天使達を貫いた。
槍を受けた無数の権天使達は、光の粒子となってシャボン玉の様に消滅した。
「フン。幾分か減ったな」
ナムウドッグの双眸に、鋭利な光が宿る。
「な……何たる力だ!」
「我々の力を格段に上回っている‼」
「ええい! 怯むな!」
「もう一度だ‼」
権天使達は口々に言うと再度、槍を構えた。
「愚かな。何度やっても同じだ。学べ虫けら共よ」
ナムウドッグがそう言った時には、権天使達の槍はまたもやナムウドッグの手の平の寸前で止められていた。
「この程度の反撃など、いと容易き事」
ナムウドッグがそう言った時にはまた、無数の権天使達が光の粒子のシャボン玉になって消滅していた。
「こんな……馬鹿な‼」
「どうやらそっちはもう、数える程度だな」
ナムウドッグは不敵な笑みを浮かべた。
「引け……っ! 引けえぇっ‼」
「我にエンカウントしたからには、無傷では帰さん。貴様等全員、残さず全滅だ」
ナムウドッグは言ったかと思うと、グンと胸を張った。
途端。
視えない力が放たれ、その場にいた権天使達は残さず、全滅した。
「スッゲ……ナムウ、今お前、一体何をしたんだ⁉」
「何。ただ覇気を放っただけだ。大した事ではない」
「それで今の権天使達を全滅出来たって事かよ⁉」
「単純に、連中が我より弱輩だっただけの事」
ナムウドッグの、その圧倒的な強さにヴェルハルトは愕然とする事しか、出来なかった。
「さて。では行こうか金星天へ。目的はすぐそこだ」
ナムウドッグは、ヴェルハルトへ振り返ると柔らかな微笑を、浮かべて見せた。
その表情にヴェルハルトはふと、安堵すると大きく首肯した。
「おう!」
そして差し出された彼の手を取ると、飛空膜を纏ったままヴェルハルトも一緒に、金星天へと飛行した。
金星天は、恋に燃えた霊魂達が集う場所であった。
愛や情熱を体現し、地上で恋愛に情熱を燃やし、それを天上の愛へと昇華させた魂が、この金星天に滞在する。
金星天の愛は純粋な神の愛に向かっており、単なる地上の情愛を超えた、神への敬虔な愛の段階とされる。
人間の愛がどの様に神の普遍的な愛に繋がっていくのか。
金星天は、地上の影の影響を受けなくなる最初の領域であり、愛に生きた霊魂達が集っている。
愛の情熱に燃えた者達が光となって輝き、中世的な愛と信仰が交差する、天国的超越が始まる美しくも重要な、場所とも言えよう。
ナムウドッグは背中を丸めると、釘鎹聖綴の姿に変化した。
「さぁ、探検だよヴェル!」
「おう! 聖綴‼」
ヴェルハルトは嬉しそうにニッカリと笑った。
作者の愛がどの様に読者の普遍的な愛に繋がっていくのか!
ここまでお読みくださり大変ありがとうございます‼
良ければ、「いいね!」もしくは「☆」をよろしくお願いします。
「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです♪




