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【反・神説】背徳の獣  作者: 緋宮 咲梗
section,Ⅲ:悪の溜まり場編
25/33

episode,ⅩⅡ:小悪魔達と鬼ごっこ

【登場人物】

釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)(12歳)……身長142cm。赤ん坊の頃、自動車事故により両親を失った唯一の生き残りでキリスト教児童保護施設から脱走し無意識にスラム街に辿り着き、仲良くなったヴェルハルトと犯罪に手を染めながらも人生を謳歌していく。しかし、突然の暴走車にはねられ呆気なく死亡する。


(ひいらぎ)ヴェルハルト(14歳)……身長166cm。日本人の母とフィンランド人の父を持つハーフだが父親を病で失って以来、五人姉弟の真ん中だが居場所を失い家出をしてスラム街で生きていたが聖綴を拾ってその兄貴分となる。聖綴を失ってからは一匹狼として生きる。父の影響でキリスト教信者だが神を信じてはいない。碧眼に長い金髪を後ろ一つに結んだヘアスタイル。


*ナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブ(年齢不詳)……身長198cm。釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)という少年の人生を生きた核なる存在。美麗と醜悪が混ざった外見をしている。自分の存在に疑問を抱く。


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 通行の許可を得たナムウドッグ=チリプス・ナタスレグアトサエブは、(ひいらぎ)ヴェルハルトを連れて先を進んだ。

 だが、生きた血肉に飢えている小悪魔達の大勢が、ヴェルハルトの姿を前にして囲む様にして後を付いて来た。

 その(おびただ)しい数の小悪魔に囲まれて、ヴェルハルトは顔を青くして震え上がり、一瞬でも隙を見せようものなら小悪魔達が、ナムウドッグとの約束を破る気ではと戦々恐々としたものだった。

 そうして怯えながら歩くヴェルハルトに向かって、下品な小悪魔達は背後から、下品な会話を交わしていた。


「こいつのケツを触っていいか?」


「いいとも。精一杯、一発食らわしてやれよ」


 しかしこれを制したのは、小悪魔リーダーのマラコーダだった。


「やめておけ、スカルミリオーネ。相手が悪い」


 この会話が聞こえたヴェルハルトは、内心密かに思った。

 これだけの数の小悪魔達一体一体にも、一応名前があったのか、と。

 マレボルジェと別名で呼ばれる第八圏谷は、十の(ボルジャ)によって構成されている。

 今留まっている汚職収賄者の地獄濠は、第五ボルジャに架かっている筈の岩橋は壊れて、谷底に崩落してしまっていた。

 その原因をマラコーダが説明した。

 地獄の岩橋が崩落する程の重大事件──それは、イエス・キリストの十字架刑である、と──。

 何にせよ、岩橋を使えない以上は、濠の中の断崖を降りて岩礁の上を渡る事になった。

 そこは小悪魔しか知らない道なので、マラコーダが己の部下を十人選んで道案内に付けてきた。


「前へ出ろ。アリキーノ、カルカブリーナ、そしてお前カニャッツォ。そしてバルバリッチャにはこの十人隊を指揮させよう。リビコッコも行け。それにドラギニャッツォも、牙の立派なチリアットにグラッフィアカーネ、ファルファレッロ、そして頭の狂ったルビカンテ。頼んだぞ」


 こうして十人隊と伴ってヴェルハルトとナムウドッグは先を進み始めた。

 ヴェルハルトにとって、下品な小悪魔達の道連れは、有難迷惑だった。

 この小悪魔達は、道を進む間ずっとヴェルハルトをからかったり脅したりと、彼が嫌がるのを喜んでいた。

 苛ついたヴェルハルトが、ついに一発小悪魔をぶん殴ろうと振り返った時だった。

 ルビカンテが敬礼ポーズを取って、言った。


「行って参ります‼」


 そうして舌をペロッと出した。

 これにバルバリッチャが答えた。


「よしっ、行って来い‼」


 そうしてお尻のラッパ──オナラを鳴らした。


「何なんだこの低レベルコントはよぉ……」


 ゲラゲラ笑っているこの二体の小悪魔に、ヴェルハルトは嘆息吐くと呟いた。


「恐ろしい道連れ……」


 するとこれにナムウドッグが答えた。


「教会へは聖人と、居酒屋には食通と一緒に行くのが相応しいのだから、地獄の同伴者としては、この"恐ろしい道連れ"でも仕方なかろう」


「確かに。勉強になるよ……」


 再度ヴェルハルトは、嘆息吐くのだった。

 ヴェルハルトはどんな奴が、濠の中で焼かれているのかを探る為に、瀝青の黒い表面を凝視しながら進んでみた。 

 だが、気配は感じられても、姿を確認する事は出来ない。

 イルカが背中を丸めて背ビレを見せるのと同じように、苦痛を和らげるようと背中を一瞬チラリと見せて、また(たちま)ち隠す罪人もいた。

 しかしよくよく見ると、瀝青の水面から至る所、罪人は鼻面だけを外へ出していた。

 すると十人隊長に任命されたバルバリッチャが、鼻面だけを水面に出している亡者達に近付いた。

 途端、皆一斉に煮え滾る瀝青の堀の中へ潜り込んだ。

 ところが、逃げ遅れた間抜けな亡者が一人、たまたま側にいたグラッフィアカーネという小悪魔が、その愚鈍な亡者の髪の毛に鉤を引っ掛けて釣り上げた。

 全身が瀝青で真っ黒な姿の亡者を見て、ルビカンテと言う名の小悪魔に向かって叫んだ。


「こいつの身体に鉤爪を引っ掛けて、皮を剥いでやれよ‼」


 小悪魔に(もてあそ)ばれる罪人は、悪猫の中に入れられたネズミ同然だった。

 隊長バルバリッチャがヴェルハルトとナムウドッグへ言った。


「他の者がこやつを解体する前に知りたい事は聞いておくように」

 

 これにヴェルハルトは小首を傾げて何を問うべきか黙考している内に、ナムウドッグが先に尋ねた。


「この我を見て、何か僅かでも知り得る事はないか」


 しかし、その亡者が口を開いた時だった。

 まだ十分に答えない内に小悪魔の一人リビコッコが喚いた。

 

「もう我慢も限界だ‼」

 

 そうして鉤を亡者の腕に引っ掛けて、肉を(むし)り取った。

 小悪魔達ドラギニャッツも(すね)を引っ掻こうとしたが、隊長バルバリッチャが止めたので小悪魔達の攻撃が少し鎮まった。

 その亡者は言葉を紡いだ。


「お前は今でこそその様な姿をしているが、名前は釘鎹聖綴(くぎかすがいさとと)だろう⁉」


「……お前は何者だ」


 そうして言葉を交わし始めた間も、その亡者は何とか小悪魔達の仕置きから逃れようと画策していた。

 

「もし、他の亡者とも話したいのなら、呼び出すから、この小悪魔達を遠ざけてくれ‼」


 だがカニャッツォがその亡者の策略を見破って、他の皆に注意を呼び掛けた。


「下へ飛び込む為に考え付いた悪知恵だ‼」


 しかし、アリキーノというお調子者の小悪魔が、からかってやろうと言った。


「お前が飛び込めば、俺はお前の後から足で追いかけはせぬ。翼でもって瀝青の上まで飛んでいく。この土手から俺達は引き上げて岩の裏手に隠れる。お前一人で俺達皆に勝てるかどうか、お手並みを拝見しよう」


 翼を持つ事で、亡者よりも勝っていると油断した小悪魔達は、その罪人を見(くび)っていた。

 小悪魔達が隠れ場を探して目を逸らした隙にその亡者は、必死になって彼を拘束していた隊長バルバリッチャの腕を振り解き瀝青の堀の中へ飛び込んだ。



ここまで読んでくださったあなたに感謝してその体を枕に眠りたい!ww

大変ありがとうございます‼

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「いいね!」は読者様がどこまで読んだのかの目印にもなって励みになりますのでどうかよろしくです♪

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