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月桂樹の葉を編む  作者: 叶笑美
群像劇
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84/110

本物の原石

大きな拍手が鳴り響く。

三兄たちの前のデザイナーのショーが終わったのだ。

それから、一瞬の間を置いて音楽が切り替わる。

先ほどまではビートがリズムを刻むダンスナンバーであったが、雰囲気がガラッと変わり、管楽器の音色がおごそかに響き渡る。

証明も一度全体的に暗くなり、会場の拍手音もいつの間にか途絶えた。

ひいらぎが先頭として一歩を踏み出した。


ランウェイはT字状になっており、その交差点に立つと、スポットライトが柊の背後をほんの少しかすめるように当たる。

すると、柊のシルエットがスポットライトの中に浮かび上がった。

途端に正面からの強烈なライトに照らされたのを合図に歩き始める。

左右から追いかけるライト、拍手喝采、歓声、それらを一身に受けながら堂々と歩く。

柊の足が前へ進む度にスカートやかさの装飾が揺らめき、光を反射する。

その姿は会場の雰囲気も相俟あいまってどこか神秘的であった。

ランウェイの端に立った瞬間、顔を隠していた鉢巻を取る、

会場中がその姿に息を呑み、どよめきさえあふれ出た。

柊がひるがえった後、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

「お、王林兄さん!めっちゃいいんじゃない!?柊くん!!」

「すごいよ!あのおごそかな雰囲気!!俺らも圧倒されちゃったよ!!」

両方から紅玉と高嶺たかねが肩を興奮しながら揺すっていると、王林も唖然としていた。

「これは、本物の原石を拾ったな・・・」

後続のモデルたちと入れ替わり、舞台袖に消えるとすぐに次の衣装に着替えさせられた。

次の衣装の時には会場の音楽も変わりアップテンポなビートが鳴り響く。

柊の衣装も今度はパンツスタイルの少しラフなものになっていた。

リップも全体的に塗り直してのランウェイに再度登場。

今度は初めから顔があらわになっていたのと、先ほどよりも衣装に目が行かないのとで、柊の顔に注目を集める。

その瞬間に、運営側の人々が見たことある顔に首をひねった。

しかし誰かと思い出す前にすぐに引っ込んでいく。

VIPルームに来ていたある少女も柊を見て首を捻っていた。

そして最後の衣装を着た柊がやって来る。

ラストを飾った柊はモデルとして終始優秀だった。

しかし、VIPルームにいた少女が動いた。


役目を終えた柊を三兄たちが迎える。

「よくやった!柊くん!!」

「めっちゃ良かったよ!!本当に未経験?」

「最高だったよ!!」

「ありがとうございます!」と照れ臭そうにする。

「あっちでメイク落として着替えておいで!」

「俺たち他のモデルさんたちの衣装回収してくるから!」

「また後で!!」

三兄たちは去って行った。

それから服を着替えてメイクを落としていたら、控室のドアを3回ノックする音が聞こえた。

「はい!」と答える。

そして入ってきた少女を見て思わず目を丸くした。

入ってきたのは頭に立派な角を生やし、前髪はパッツンで長い髪を高い位置でポニーテールにしている。

この少女はかつて魔王軍が一時預かり、四天王たちで接待したものの、パーティによってかき乱されたが笑顔で許していただいたという懐の深さをあわせ持つ鬼の一族族長の愛娘、シャルロットだった。

ここは良い家柄同士、関わりがあったのだった。

「シャ、シャルロットさん!!来ていらしたのですか!!」

「それはこちらのセリフです!!柊さん!何故主賓側であるあなたがランウェイを歩いておられるのですか?」

目線を逸らして気まずそうにする。

「そ、それは・・・色々とありまして」

「それに、噂で聞きましたが、婚約者の方が戻ってきたとの情報を耳にいたしましたが、どうしてメリリーシャなんかにいらっしゃるのです?」

痛いところを突いて来るシャルロットに、思わず表情をゆがめる。

「あ、あのですね・・・」

”また逃げられた”なんて事実が実家にバレては、次こそ強引に連れ帰られる。

何か言い訳をしないと柊が山茶花さざんかと結ばれる未来はない。(今も希望は薄いが・・・)

その時、タキシードのような服が目に入った。

「そう!服です!とびきりのドレスとタキシードを選びに来ました!!」

「挙式の服なら、柊さんの家は紋付袴もんつきばかまに、花嫁には家に伝わる白無垢しろむく打掛うちかけがあるのでは?」

不思議そうに首を捻る聡明な少女の鋭い推理に根を上げた。

「く・・・あの、絶対に他言しないでください。実は・・・また逃げられました」

その事実を聞くなり、衝撃で言葉を失っていた。

「ここまでは婚約者の山茶花さんを探しに来たのですが、道中で先ほどのブランドのデザイナーさま方に助けていただきました。なのでその恩返しにと、ランウェイを歩くことになりまして・・・」

「そうでしたか。みんな柊さんを見て疑っていましたよ」

「そ、そうですよね。恩があるとは言え、この催事であることを知りつつ出場したのは、私の考えが甘かったですね・・・」

反省したようにうつむく柊に、シャルロットがため息を吐いた。

「とにかく、お急ぎください。他の方も来られるかと思います」

「はっ!そうだ!急がないと!!」

柊が思い立ったように立ち上がる。

「私は今日、見なかったことにいたしますので、柊さんもなるべく早く退散してください!」

「わかりました!恩に着ます!!」

礼を言うと急いで荷物をまとめた。

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